ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

周辺住民の甲状腺被ばく量に関する今までの報告

[ 2012/07/23 (月) ]
 ヨウ素I-131 の半減期は8日なので、初期に福島第一原発周辺住民が受けた甲状腺等価線量は、ある時点での残存放射線の実測+様々な条件設定による実被ばく量の推定、になります。
条件の設定によって数値は振れる訳で、いくつかの報告(論文)があります。それらに関する論説をアーカイブしておきます。
(新しい順です)

1.「復興アリーナ WEBRONZA×SYNODOS」2012/7/19 放射線の健康影響をめぐる誤解 片瀬久美子

 (ごく一部のみ引用)

 子ども達の甲状腺の被曝量の分布をチェノルブイリのケースと比較してみます。 

 福島の原発事故後、2011年3月26、27日に検査が実施された子どもの甲状腺被曝量の調査

 これらの検査結果を見ると、チェルノブイリでのケースと比較して、福島での原発事故による子ども達の甲状腺の被曝量は低く抑えられています。甲状腺がんのリスクが心配される甲状腺等価線量が50mSv以上の子どもはこれまでに確認されていません。(ただし、今後も慎重に継続して健康調査を行っていくことは必要だと考えます)

 現時点で「原発事故の影響で(前代未聞の速さで)甲状腺癌が発生」というのは荒唐無稽な話ですので、そういう噂話があっても無視していいでしょう。

 福島県が実施している甲状腺検査での診断基準は次の様になっています。


A判定(A1)結節や嚢胞を認めなかったもの[64.2%]
   (A2)5.0㎜以下の結節や20.0㎜以下の嚢胞を認めたもの[35.3%]
B判定   5.1㎜以上の結節や20.1㎜以上の嚢胞を認めたもの[0.5%]
C判定 甲状腺の状態等から判断して、直ちに二次検査を要するもの[0.0%]

A1、A2判定は次回(平成26年度以降)の検査まで経過観察
B、C判定は二次検査

A2判定は、わずかな所見はあるけれど正常範囲内のもので、約30%の人に見られるようなものです。
B判定となり二次検査が指示された人は186人(嚢胞の1人を除いて他は結節によるもの)です。B判定でも、基本的には良性であるケースが多いと考えられます。

 福島県による検査結果の表を示します。

 今回の福島の甲状腺検査と、以前に長崎で調査したケースとを比べて、福島県の子どもたちの甲状腺の状態は明らかに異常なのだという指摘がネット上の複数のブログに書かれ、それらを読んで大変な事態だとして不安になってしまった人達も多数いました。

以上の様に、福島県の子どもたちの甲状腺の状態は明らかに異常だとしていた話は、全く異なる分類の数字を比較していたのです。それぞれの甲状腺検査の基準についてきちんと確かめずに早とちりをしたと考えられます。分類の基準を合わせてデータを比較してみると、福島と長崎の検査結果の差はほとんどないことが分かりました。資料はちゃんと読まないとダメですね。


(追記)


2.床次(とこなみ)氏らの論文についてのメモ 田崎晴明教授

 (ごく一部のみ引用)

 2012 年 3 月 11 日の朝日朝刊の記事では、成人の最大の甲状腺等価線量が 87 mSv とされていた。今回の論文では、成人の最大値は 33 mSv子どもの最大値は 23 mSv)。かなり割り引かれている。

 2012 年 3 月 12 日の ETV 特集では、甲状腺のヨウ素の量が最大だった成人が摂取したのと同じ量のヨウ素を乳幼児が摂取していたらと仮定して、乳幼児の最大の甲状腺等価線量を約 900 mSv と推定していた。しかし、乳幼児が成人と同じ量の空気を吸い込む、あるいは、同じ量の汚染水を飲むというのは、(どんなに控えめに上品に表現しても)マヌケきわまりない仮定ではないだろうか? そういう話を床次氏が堂々と話して NHK でも放送しているのを見て、ぼくは完璧に我が目を疑ったし、未だに、床次氏がそういう(かなり表現を抑えても)馬鹿げた話を披露した(そして NHK もそれに乗った)真意をはかりかねて当惑しているのだ。

 また、床次氏の調査について言えば、なぜ、これほどに発表が遅れた(測定してから、朝日、NHK に連日に登場するまで一年弱かかっている! 緊急を要する測定じゃなかったのだろうか??)のかも不可解に感じてはいる。

 以前の推定を取り下げたのはよいことだが、NHK とタッグを組んであれほどに世間を騒がせたことについては、研究チームから何らかの発表をする義務があると思う。そういのは出ていないのかな?



3.「六号通り診療所所長のブログ」2012/7/19 原発事故による甲状腺初期被曝のデータを考える

 (ごく一部のみ引用)

 これは事故後約1ヶ月後に、弘前大学教授の床次眞司先生らのグループによる、甲状腺の被曝量の調査を元にしたもので、これまでに何度か断片的に報道されたものですが、正直内容はあまりなくかなり水増しされても4ページに満たないという釈然としない内容のものです。

 (行政による調査)
 原子力安全委員会の勧告により、3月24日から30日に掛けて、いわき市や川俣町、飯舘村の15歳以下の住民1149人シンチレーションサーベイメーターを用いた甲状腺の被曝量の検診が行なわれ、甲状腺等価線量は最大で32mSvと発表されました。

 甲状腺の被曝量を算定するには、正確性に劣るという欠点があります。 *1

 しかし、行政はこの結果をもって「甲状腺の被曝線量は、50mSvにも満たないもので、問題はない」という観点から、それで調査は打ち切られています。

 (床次教授による調査)
 4月12日から16日の間において、南相馬市からの避難者45人と浪江町の住民17人の計62名に対して、今度はNaIシンチレーション・ガンマ線スペクロトメーターによる甲状腺の被曝線量の測定を行なっています。
この調査は年齢を問わずに行なわれていて、逆に言うと未成年者の測定は8名しか施行されていません。

 論文に記載された生データは基本的にはこれだけです。

 0~9歳のお子さんは、計測されたのは5名のみですが、その甲状腺等価線量は最大で24mSv大人では最大で34mSvになります。

 (鎌田教授による調査)
 放射性ヨードを実測したデータは極めて少なく、上記のもの以外には論文化されているのは、以前にご紹介した広島大学名誉教授の鎌田先生らのグループによるものだけです。

 飯舘村と川俣町の住民15名に対して、5月5日に尿の放射性ヨード131を測定する、という形で行なわれています。
結果として、放射性ヨードが尿から検出されたのは5名のみで、そこから推定される甲状腺の等価線量は 27~66mSvとなっています。
つまり鎌田先生のデータは行政のデータや今回の床次先生のデータと比較すると、より被ばく量は多かった可能性を示唆しています。

 鎌田先生の論文を含めても、放射性ヨード131の甲状腺被曝についてはどんなに多く見積もっても100mSvは決して超えない、というのが概ね共通認識のようです。

 ただ、被曝による健康被害の発生はまだ現時点では未知数と考えるべきであり、今後状況の変化によってはこうした初期被曝の推定のデータはもう一度再検証をする必要があるのではないかと思います。

 *1 6項の論説に詳細があります。

4.「六号通り診療所所長のブログ」2012/5/16 福島第一原発北西37キロの被ばく調査結果を考える

 (ごく一部のみ引用)

 第一著者は広島大学名誉教授の鎌田七男先生です。

 昨年の5月初めから6月に掛けて、福島県飯舘村と川俣町の住民15名の原発事故後の生活の聞き取り調査と、尿放射性セシウム放射性ヨードの測定を行ない、その結果から住民の被ばくの程度を推計したものです。

 外部被爆は行政により公表されているモニタリングポストの空間線量率を元に、住民のアンケート調査から(中略)累積実効線量を計算しています。

 内部被曝の調査として、放射性物質の放出開始を3月12日として、その54日後の5月5日78~85日目の5月29日~6月6日に、同じ住民15名に尿中の放射性セシウム(134と137)および放射性ヨード131の測定を行なっています。

 基本的にこの文献において、内部被曝の推計に使用されるデータはこれだけのものです。

 これでこの2回の測定からトータルの内部被曝の預託実効線量を換算するのは非常に困難なように思えます。

 放射性ヨード131に関しては、もう少し話はシンプルで最初の測定においても、検出されたのは5名のみです。そして、その全例で2回目の測定では未検出となっています。

 放射性ヨードの被曝を検証するには、少なくとも被曝後1ヶ月以内の計測が必要であったと考えられます。

 その結果は甲状腺の等価線量が27~66mSvと試算されていますが、これは甲状腺へのヨードの取り込みが摂取量の3割であるとの仮定のもので、実際にはこれはかなり幅があり 1つの参考程度にしか言えないのではないかと思います。

 ちょっとミスがあり、(中略)この雑誌の査読はどうなのかしらと疑問になりますし、個々の計算の正しさもちょっと不安に感じます。(中略)そう思ってよく見ると、(中略)どうも腑に落ちない数値が所々にあります。




 (ごく一部のみ引用)

 甲状腺がんは、殆ど死ぬことがない、それほどは怖くないがんであり、気づかないが、検診するとかなりの人に見つかるものの様です。

 米国でも、1970年代に、検診が実施されたために、15歳以下の子供の甲状腺がん発症率が一挙に20倍になった例があるそうです

 被曝量はベラルーシより若干低いに過ぎないポーランドでは、殆ど発症していません。

 2040年頃になれば、最も被曝量が多かったゴメリ地区で、10万人・年当たり、10人程度、ミンスク等で、0.4人、発症する可能性はありますが、ベラルーシで1990年頃から急増した、小児甲状腺がんの発症は、近藤宗平氏の主張のように、単に検診が実施されたため、と言えそうです



6.2011年3月の小児甲状腺被ばく調査について
田崎晴明先生(公開: 2011年11月12日 / 最終更新日: 2011年11月29日)
『放射線と原子力発電所事故についてのできるだけ短くてわかりやすくて正確な解説』

 (ごく一部のみ引用)

 現地災害対策本部の依頼を受けた広島大学の田代聡教授らが福島に出かけ、3月26日から30日までのあいだに、いわき市保健所、川俣町公民館、飯舘村公民館の三カ所で、合計で1000人を超す児童の甲状腺線量の測定をおこなった。これは、甲状腺等価線量で100 mSvを超える被ばくをした可能性のある児童をみつけるためのスクリーニング検査である。

 以上をまとめれば、
 バックグラウンドの線量率の高いなかでの測定だったが、ある程度は信頼できるデータが得られたと考えられる
 「最も多い人で35mSv」とされた「最も多い人」は一名の児童であり、それ以外のほとんど全員の児童の甲状腺からの線量率は、その半分以下だった

 換算方法の批判的検討

 1. 吸入のタイミングのモデル化について
 実にうれしいことに、今回のようなラフな測定(そして、圧倒的な低リスク)では、これは問題になる相違ではない(これまでの人生で何度も積分を計算してきたが、積分の結果を見て心からほっとしたのは珍しい貴重な経験だった)。

 2. 測定日の違いによる減衰の効
 これも、また、大した問題にはならない。

 3. 「早野仮説」を採用した場合の評価
 早野仮説が正しければ、現実のほうがより楽観的だったということになる。うれしい報せだ。

 補正がだいたい相殺して公式の評価による換算方法はほぼ正確ということがわかる(もちろん、これは偶然)。

 情報の公開について
 データの解析方法だけでなく、今回の調査のさまざまな詳細 --- 測定環境、測定方法、バックグラウンドの値、バックグラウンドの引き算の仕方、考え得る誤差要因、そして、様々な生データ --- も何らかの形で公開しなくてはならないと私は信じている。

 われわれ日本人全体にとって重要な意味をもつこの調査のことをしっかりと記録し、もてる情報を公開していただきたい。

 3月末の重要な時期におこなったせっかくの調査である。その成果は、将来にわたって最大限に活用できる道を開いておかなくてはならないと強く信じている。



つぶやき

 床次論文も鎌田論文も評価はいまいちのようですね。
 ただし、4月~5月のあの時期に、データを収集した事は評価に値するのでしょう。

 3項の論説、6項の論説のなかで、データ収集の旗振りに消極的だった行政の問題や情報の公開の不足を指摘していますが、もっともだと思います。

 個人的に気になるのは、5項の論説です。検査頻度や精度が上がれば異常の検出が増えることは、結構、言われていますが、それをデータで裏付けた訳です。チェルノブイリでさえ被ばく影響による子供の甲状腺がんは言われているほど増えていないのでは、というこの論説に対して、もっと多くの専門家の意見を聞きたいところです。


関連エントリーはカテゴリーにひとまとめにしています。記事下部or左欄のカテゴリーリンクから、どうぞ。

【個人的メモ】
●「三浦半島における放射線情報(tokokのブログ)」2012/7/28 事故直後の関東各地における内部被ばく評価 (2011年3月15日から3月28日までの吸入摂取)
●Togetter 福島以外の県の3-15-3-28の2週間の線量評価:tokok さんの解説(by parasite2006)
[ 2012/07/23(月) ] カテゴリ: 甲状腺がんなどに関する | CM(2)
内緒さんへ
丁寧なコメントありがとうございます。

一つの事に対して、様々な学説や考察があります。できればその多くを読んだ上で自分なりの理解をすればいいのでしょうが、日常の限られた時間や制約の中で、なかなか難しいと思います。

私ができる範囲であれば、ご判断の材料を提供可能ですので、遠慮なく、ご質問などして戴けたらと思います。
[ 2012/07/25 20:00 ] [ 編集 ]
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[ 2012/07/25 18:26 ] [ 編集 ]
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