ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

福島の方々の不安の現状、カウンセリングという切り口から

[ 2012/05/09 (水) ]
アーカイブ、その1

 (NPO法人)遺伝カウンセリング・ジャパンがホームページ【一般の方へ】に下記の資料を掲載しています。
 Q&A形式の資料ですが、結構、内容が深いものもありますので、アーカイブさせて戴きます。

●放射線被曝の影響を正しく理解するために―遺伝カウンセリングの専門家が語る放射線被曝の知識―(2011/7/4改定版)

 この組織の目的や活動については、ホームページの【遺伝カウンセリングとは】をご覧ください。(ブログ主も初めて知った次第です)

アーカイブ、その2

 本エントリーの目的はもう一つあります。(こちらがメイン)
ホームページの【認定遺伝カウンセラーの方へ】に下記の資料があります。

●放射線被曝の不安にいかに対応するか―遺伝カウンセリングの立場から

これは一般向けではなく文字通りカウンセラー向け資料なのですが、被曝カウンセリングという切り口から、福島の現状・人々の心理やリスクコミュニケーションのヒントなどを知る事ができる貴重な文献だと思いましたので、アーカイブさせて戴きます。

なお、概略的なことは、下記の新聞記事にあります。
●yomiDr.-ヨミドクター(読売新聞)2011/10/20 被曝カウンセリング…住民に個別対応、不安を軽減 こころ元気塾

『医学のあゆみ』Vol.240 No.8 2012/2/25のフォーラムに『シリーズ 放射線被曝と遺伝学 Vol.1』として掲載された文献

 本シリーズは、2011年11月に幕張で開催された「第56 回日本人類遺伝学会/第11 回東アジア人類遺伝学会」(大会長:羽田明/千葉大学)におけるシンポジウム「放射線被曝と遺伝学」(座長:千代豪昭・島田義也)の講演内容をもとに執筆された。

 著者:千代豪昭/ちよひであき 日本遺伝カウンセリング学会理事


ブログ主注:ボリュームが大きいので、内容の項目の紹介と一部の引用のみですので、詳細は原文をご覧ください。

(はじまり部分は略)

■南相馬市における被曝カウンセリング
(ごく一部のみ引用)

 2011年9月と11月の2回にわたって、南相馬市のH 産科医院において、被曝カウンセリングを行った。
 被曝カウンセリングは来院患者や家族のなかから希望者24 名に対して個別カウンセリング(1 回30分~1 時間30分)を行なった。クライエントは妊婦、夫婦、育児中の母親、家族、中学生の女の子など、まちまちであった。

■被曝カウンセリングの方法論に関する考察

(略)

1.カウンセリングを開始する前に
(ごく一部のみ引用)

 実際にカウンセリングを始める前に、次のようなことを理解しておく必要がある。

① 住民の放射線被曝に対する知識レベルは想像以上に高い
(ごく一部のみ引用)

 サンプリングバイアスは否定できないが、患者や家族の被曝に関する知識レベルの高さには驚かされた。

② 住民のストレスへの対応状況を理解する必要がある。
(ごく一部のみ引用)

図1被曝不安の進行仮説

 外見上は安定しているように見えても、内面的には高い緊張の持続や、偏った均衡が生まれている可能性がある(国や専門家に対する不信感もその一つといえる)。
 ただ、現地の被曝不安については、医療従事者への信頼感がまだ失われていないと感じたので、カウンセリングの効果は期待できると思われた。

③ 風評に対する“怒り”がストレスの高さを表している
(全文引用)

 風評(表1)に対する“強い怒り”の感情をカウンセリングの現場で表出するクライエントが多かった。“怒り”は比較的初期の心因反応であるが、同じクライエントが「まあ、しばらく我慢するしか仕方ない」との“受容”の気持ちを表す例も見られた。
“受容”と“否定”を繰り返しながら少しずつ受け入れていくことが多いが、あらたなストレスに恒常的に曝露し続けている異常な状態とも考えられる。「テレビで現地が報道されるとチャンネルを変える」とか「インターネットは見ないようにしている」というクライエントも少なくなかった。
表1現場でクライエントから聞かれた風評・差別観・不信感

2.カウンセリングによる介入の実際
(全文引用)

 住民の放射線被曝に対する一般知識レベルは高いが、不安を増強する“誤解”“バランスよい判断の欠如”も多く、住民の話を聞いていると、遺伝カウンセラーが介入できるいくつかの類型化したパターンがあると思われた。
ただ、被曝と健康障害の関係には確率的なものが多く、さらに個人の価値観が加わるため、不安に介入することは容易ではない。
筆者は“カウンセリングの小道具”と呼んでいるが、カウンセラーはクライエントの価値判断に介入し、不安を軽減したり、逆に注意を喚起するための“教育材料(科学的データに基づく)”をいくつも準備しておかねばならない。
ただし、カウンセリングはクライエント自身に納得してもらうのが目的で、決して“説得”や“ディベート”をしてはならない。
小道具の使い方には熟練した対話技術(カウンセラーとクライエントの間に確立した好ましい人間関係を利用して、相手に自然に選択してもらう。決して押し付けない)が必要で、安易に用いるとカウンセラーへの不信や拒否に繋がる危険がある。
とくに講演会などで多数の聴衆を相手にする場合は、一人ひとりの心理反応や理解度がわからないため、失敗の原因になる。
以下、多くあった質問のパターンと、それに対応するカウンセリングの小道具を紹介するが、決して安易な“説得”に利用しないで頂きたい

① 「これからの我々の健康を支配するのは放射線被曝のみである」
(全文引用)

 意識の“偏った集中化”である。
がんの発生要因一つをとっても、原因には生活習慣、環境要因、遺伝的影響などがあり、被曝は環境要因の一つに過ぎない。
クライエントの性格や経験に合わせて、生活習慣と被曝の健康リスクの比較(たとえば、喫煙のがん生涯リスク増加量は高線量被曝に相当するとか、運動不足や肥満は400 mSv くらいの被曝に相当といった比較)も利用できる。
よく勉強しているクライエントには、生活環境と発がんのメカニズムの解説(生体の酸化作用や免疫の話)も有効であろう。
現状の被曝のレベルでは、ストレスや生活制限による運動不足が子どもの健康や発がんに与える影響は、被曝の影響より高いのではという不安が現地の医師の間で話題になっている。根拠が薄弱との指摘を受ける可能性があるが、“勇気づけ”の目的で、「今後、皆さんが日常の健康管理に気をつけることにより、他府県の住民より長生きしたり、がんの発生率が下がる可能性もある」と励ますのも一つの方法だと考えている。

② 「しきい値以下はゼロ発生、しきい値を超えたら多発する」
(全文引用)

 放射線被曝による先天異常の発生はしきい値モデルであるが、上記のような理解をしているクライエントが多い。
自然のバックグラウンドを理解させること、しきい値とはバックグラウンド(図2)を基準に統計的な有意差が出る限界であり、しきい値の前後で発生率が大きく異なることはない。
図2胎児と被曝(遺伝カウンセラーの基礎知識)

同様に安全を守るために人為的に決められた許容量を「少しでも超えたら危険」と考えるクライエントが多いが、カウンセリングの立場からは“許容量”は相対的な基準であり、自分で納得できることが大切である。許容量としきい値の違いをカウンセラー自身が認識しておかねばならない。

③ 「人工放射線被曝は危険だが、自然放射線被曝は安心」
(全文引用)

 さすがに現地ではこのような初歩的な誤解は聞かれなかったが、一般には誤解が多い。
放射線被曝の健康への影響は被曝形態(内部被曝か外部被曝か)や、線質の違いにより左右されるが、人体への生物学的影響はシーベルトが同じなら人工放射線も自然放射線も同じである。自然放射線被曝は自らの意志で免れることが難しく、許容するしかないというだけの話なのである。

④ 「確率の理解はむずかしい」
(全文引用)

 10 mSv くらいの低線量被曝でも小児がんが最大40%くらい増加するとのオックスフォード小児がん調査の報告(2005 年)がよく知られている。
福島の子どもの半数くらいが小児がんに罹患すると誤解していたクライエントがいた。
わが国の小児がんの発生は15 歳以下人口10 万人に数人の年間発生率である。小児がんの30~40%は被曝の影響を受けやすい白血病であるが、調査報告をそのまま受け入れるとしても個人レベルでは1 万人に1 人以下のリスク増加なのである。実態は交通事故の生涯確率より低い
遺伝カウンセリングの現場でも確率に弱い日本人の特性(?)を痛感している。ただ、カウンセラーが恣意的に安全を強調しているとクライエントに受け止められると、カウンセリングの効果は半減するので、カウンセラーは考える材料を提供してクライエントが自分で納得するまで見守るのが原則である。

⑤ 「低線量被曝の影響は不明と言われているので怖い」
(全文引用)

 “ わからない” ことは誰にとっても大きな不安増強因子である。低線量被曝(100 mSv 以下)の健康調査をめぐって専門家の意見が分かれるのは、がん発生率が低いので調査集団のサイズが問題になること、個人被曝線量の正確な把握が困難、がん発生は交絡因子(生活習慣、環境因子、遺伝的背景など。とりわけ受療行動や医療被曝など社会経済的背景)が複雑なため、厳密なコホート調査が難しいからである。
わが国の専門家の間ではデータ処理をめぐって反論が多いが、原子力施設労働者の疑似コホート調査は20 mSv 弱の低線量被曝で100 mSv に換算して9.7%の相対増加率を報告している。低線量で利用することは好ましくないとされているが、“しきい値なしLNT 仮説” を主張するBEIR の推測(1 万人が1 Sv 被曝すると1,000 人のがん死増加)をあえて使って計算した値より2 倍近くも高い。
議論は専門家に任せるとして、たとえこの報告を受け入れたとしても、がん生涯リスク35%のわが国では1~2%の増加であり、福島県の多くの住民が心配しているレベルよりはるかに低い(今後の生活習慣の改善により取り戻せる範囲ではないか)。
低線量被曝の例として、日本の医療被曝についての話(国民1人あたり年間2 mSv を超える被曝量。このため、日本人のがん生涯リスクを3%以上高めているというランセット(2004 年)の報告があるが、わが国が医療先進国で長寿国であることも事実)も利用できる。ただ、この領域は特に“ 安心の説得” にならないよう慎重に対応すべきである。

⑥ 「被曝住民は次世代への遺伝的影響を免れない」
(全文引用)

 「被曝した子供たちは将来、奇形児しか産めない身体になっている」など、心ない風評に対して、“非科学的な妄言”と怒りをあらわにするクライエントも、一方では「このままここに住んでよいのか」と大きな不安をもっていた。
ウクライナや広島・長崎の調査で先天異常の発生率や遺伝子突然変異が上昇しなかったことを知っている住民も少なくないが、不安は解消されていない。この領域では一般的な先天異常の遺伝カウンセリングと同様なカウンセリングの進め方が利用できる。
まず遺伝病や染色体異常を含む先天異常の発生について、自然のバックグラウンド(図2)を理解させることから始める。
図2胎児と被曝(遺伝カウンセラーの基礎知識)
ほとんどのクライエントは、バックグラウンドを過少評価している。染色体異常発生機構によると、誰でも染色体異常をもった配偶子を15%前後もっていること、受精卵の数10%は着床前に淘汰されること、臨床的流産は15%もあることを説明する。これらの淘汰機構により、受精卵の段階では多数存在したと考えられる染色体異常や遺伝子異常も、新生児の段階ではそれぞれ1%のレベルにまで減っているのである。細胞レベルの実験では放射線による突然変異が容易に確認できるのに、哺乳類では新生児に放射線の影響が確認されにくい理由である。
 遺伝カウンセリングでは理論的可能性よりも経験的事実を優先して考えることが原則である。理屈っぽい住民に対しては、放射線突然変異がどれくらいの線量被曝で起こるか(突然変異倍加線量は1~1.5 Sv と高線量)、あるいは昔は東北地方では多いといわれてきた近親婚(いとこ婚で先天異常の発生率は1.5~2 倍に増加)の効果のほうが今回の被曝の効果より大きいといった説明も利用できる。バックグラウンドと比較しながら被曝の効果を説明する。広島・長崎の健康調査やチェルノブイリ事故後の健康調査を丁寧に説明するのもよいと思われる。
インターネットの風評では事故地の住民の遺伝的問題を扱った悪質なものがあり、現地の子供たちの就職差別や結婚差別に繋がりかねない重大な問題である。今回の被曝程度で将来にわたって遺伝的影響が生じる可能性があり得ないことをしっかりと伝えるべきであろう。


―――――――――――(別のソースから、図2の解説です)―――――――――――
●「Fetal skeletal dysplasia forum」2011/5/17 MTPro記事「現在の被ばくレベルで中絶する必要ない」を読んでの個人的雑感(室月淳氏)
胎児死亡や催奇形性については線量には明らかな閾値が存在しています.
たとえば妊娠初期流産では100mGy催奇形では100-200mGy発育遅延や精神発達遅滞では100mGy以上となっています.こういった事実から胎児被曝量の閾値は100mGyとされ,それ以下では妊娠中絶の理由とならないことは,ICRPの勧告にも明記されています.
一方,胎児被曝によって出生後に発症する小児がんのリスクは確率的なものであり,閾値というものが存在しません.細胞のDNA損傷はたった一回の放射線照射でも起こりうるので,安全な被曝量などはあり得ないわけです.被曝量が増えれば幾何級数的に発癌の危険性は増加します.その相対リスクは,10mGyの被曝により1.4倍となるとされています.小児がんの自然発生率は0.2-0.3%ですので,10mGyの被曝によりそれが0.3-0.4%程度となるというわけです.(中略)10mGyの被曝は小児期の発がんのリスクを40%上昇させますが,これは集団としてみた場合の効果です.
―――――――――――(元の資料に戻る)―――――――――――

⑦ 「年間1 mSvが許容量だと、われわれはどうすればよいのか」
(全文引用)

 事故直後より下がったとはいえ、屋外空中線量が年間3.5 mSv の南相馬市の住民に何度も聞かれた質問である。年間1 mSv 線量限度はICRP が勧告した一般大衆の被曝限度であるが、真意は「無駄な人工放射線の被曝は極力避ける」ことにあり、“非常時”には現場の状況を配慮して国ごとに暫定的に別の基準を設けることが勧められている。
年間1 mSv の人工放射線被曝は“平時”の努力目標であり、これを“非常時”の地域に適用したことが今回の悲劇の原因と筆者は考えている。
日本産婦人科学会は2011 年4 月に「妊婦の50 mSv 以下の被曝では人工妊娠中絶の必要がない」ことをウェブを利用して国民に訴えた*1が、「職業被曝の基準より甘いのか(胎児線量で1 mSv を超えないように妊娠管理)」との声に急遽、公開文を撤回した経過がある。職業被曝の線量限度は“平時”の基準で、妊娠中絶をすべきかどうかの選択は、胎児の生命を左右する“非常事態”である。同じICRP も100 mSv 以下で人工妊娠中絶をしないよう勧告している。高度汚染地区は東北の一部に限定されているが、放射性物質による食品の汚染や、一部地域への飛散を介して日本全土がパニックになっている現状では平時と非常時の判断は難しく、被災地住民に必要以上の精神的負担を強いる結果になった。
 実際のカウンセリングでは、自然放射線の被曝バックグラウンドをしっかり理解させることがよいと思われた。
花崗岩地が多い関西では東北より年間0.4 mSv 近くラドンによる自然放射線被曝が多いし、高度が1,000 メートル上昇すると1.5 倍被曝線量が高まる。現在の南相馬の年間3.5 mSv はニューヨーク市の年間自然被曝量に近い。「1 mSv にこだわると、アメリカには子どもをつれて転勤できなくなりますよ」と話すとびっくりされることが多い。自然放射線被曝が年間10 mSv を超える地区は世界に多数あり、健康調査が実施されているが問題はでていない。西日本には三朝温泉とか有馬温泉など、わが国では有数の放射能泉があり、源泉付近の放射線量は避難基準のレベル(ラドンによるα線被曝)であるが、これらの地域でも昔から健康調査が行われてきて、影響が否定されている。

*1 内容を紹介している記事です。
●「Fetal skeletal dysplasia forum」2011/5/17 MTPro記事「現在の被ばくレベルで中絶する必要ない」を読んでの個人的雑感(室月淳氏)

⑧ 「内部被曝が心配」
(全文引用)

 外部被曝については理解が進んでいる現地住民も内部被曝は理解が難しく、過度に不安をもっている例が多い。
南相馬市では新規導入したホールボディカウンタ(WBC)による子どもの検査が進みつつあり、実効半減期が100 日程度のセシウム137(少量でも継続的に体内に入るとある程度の蓄積が心配されている)については大きな被曝は見つかっておらず、住民の不安低減に役立っているように見えた。
人工放射性物質の内部被曝は実効半減期、継続的な摂取量、体外への排泄率で決まり、さらに特定の臓器への親和性およびその臓器の発がん性の問題があり、遺伝カウンセラーが現場で相談に乗ることは難しいが、チェルノブイリ事故でも甲状腺がん以外の影響は見られていないことを強調すべきである。
ヨウ素製剤を服用しなかったことを悔やむ住民もいたが、ヨウ素製剤は被曝直前、遅くとも被曝後数時間以内に服用しないと効果が低い。ヨウ素の食品による摂取率が高い日本人では放射性ヨウ素の甲状腺への移行率は5%くらい(世界標準では30%以上)と言われ、今後の経過を見守る必要はあるが、恒常的なヨウ素不足が背景にあるウクライナ地方と比較することはできない。
 現地の現状では、内部被曝よりも外部被曝のほうがはるかに大きな課題である。ただ、WBC 検査でやや高い値をしめす子どもが見つかり、家庭菜園の野菜からの内部被曝と考えられたと聞いた(関係者からの伝聞情報)。WBC 検査はγ線以外は測定できないなど技術的限界もあり、現時点でどれほどの意味があるか、効果を疑う研究者もいるが、このような指導には役立つ場合があるし、住民の不安対策にはある程度の効果があるように思われた。
内部被曝についてもバックグラウンドの自然放射性物質による内部被曝を理解させることがカウンセリングでは大切である。欧米では年間1~2 mSv の内部被曝原因となっている空気中のラドンによる被曝(日本では年間0.5 mSv 程度)がある。また、放射性カリウム(カリウム40)や放射性炭素(炭素14)は生物の構成成分でもあり、誰でも身体から100 ベクレル前後(体重1 kg あたり)の放射線を出している。実効線量係数が小さいのでセシウムと比べると人体への影響は半分であるが、カリウムの豊富なバナナを1 本食べると20 ベクレルくらいの自然被曝をするという。
子ども達の尿からも毎日数10 ベクレルの放射性物質(カリウム40)が排泄されているのが普通である。福島市の子どもの尿から1 ベクレル前後のセシウム137 が測定されたとしても、バックグラウンドよりはるかに低い。
人工放射線被曝を極力下げようというICRP の考え方は医療従事者として賛同できるが、食品検査で公表される人工放射線だけをことさら強調してはいけない。WBC 検査についても、自然のバックグラウンドに比較してどれくらい人工放射性物質の被曝が加わっているか、一人ひとりのデータを基に説明が必要であろう。検査が不安を増幅させる結果になってはならない。

⑨ 放射線ホルミシス効果を信じる住民への対応
(全文引用)

 低線量の被曝により健康の向上を信じている被曝住民に遭遇することが稀にある。軽度の被曝が刺激になって生体の抗酸化作用や一部の免疫機能が向上し、がんを抑制したり、健康度が向上するというのがホルミシス効果説である。DNA 修復機能の存在や放射線適応応答現象(同じ線量でも少量づつ分割して照射すると生体のダメージが軽減する現象で、放射線治療にも応用されている)から、低線量被曝による健康作用はともかく、ある程度のしきい効果の向上を指摘する研究者も少なくない。わが国には放射能泉(温泉法では人体が発する放射線(約100 ベクレル/Kg)にほぼ相当する1 リットルあたり111 ベクレル以上の温泉を微放射能線、672 ベクレルを超える温泉を単純放射能線と規定している)が多く、昔から健康によいと言われている温泉には放射能泉が多いとの通説もある。
しかし、低線量被曝の健康効果が疫学的に厳密に証明された論文を筆者は知らないし、我々の生活環境は活性酸素など生体や遺伝子を刺激する酸化作用の促進因子に満ちあふれているので、わざわざ積極的に被曝をすることは意味がないと考えている。
 ただ、この説を信じている被曝住民に対してあえて否定する必要はない。筆者はこのような住民には被曝不安が根底にあると考えて、共感的に対応しながら、生活習慣とがん生涯リスクとの関係など教育的介入を行なうようにしている。被曝カウンセリングの現場で、ホルミシス効果を小道具として利用することは、クライエントの状況によっては強い拒否に会う危険があり、一般的ではないと考えている。

■おわりに

(略)

謝辞
(全文引用)

 被曝カウンセリングの場を提供して下さった南相馬市の高橋亭平先生と、原町中央産婦人科医院のスタッフの皆様に心から謝意を表明したい。高橋先生は自ら闘病の身でありながら、地域住民のために診療活動を継続する一方、地元の被曝対策のリーダーの一員として奮闘されていたが、その姿には一医療従事者として心を打たれた。 

文献/URL

(略)



つぶやき

 素人ながら、本内容はバックグラウンドとの比較やリスク評価の部分では、リスク管理と同じことを言っていると理解しました。既エントリー
 さらに、「危険論者」の発信などが福島の方々への傷害そのものになっていることも、あらためて明確に確認できました。


 関連するKさんのブログ記事を紹介します。最後に近い「中学生に話して涙が出そうになったこと」です。
●「Maybe Blue」6★ひまわり先生のお話から

関連エントリーはカテゴリーにひとまとめにしています。記事下部or左欄のリンクから、どうぞ。

【個人的メモ】
●「Fetal skeletal dysplasia forum」2012/4/4 放射線の遺伝的影響はない(室月淳氏)
[ 2012/05/09(水) ] カテゴリ: 放射線のリスクに関する | CM(2)
Re: タイトルなし
>流行病、伝染病と言われた当時から、変わらないな。

お医者さんの実感のこもった一言ですね。

放射線についても、残念なことに、広島・長崎や第五福龍丸の昔かしと同じ轍を踏んでいる部分がある、ということでしょうかね。

そんなことはない、との希望を持っています。
[ 2012/05/15 08:25 ] [ 編集 ]
流行病、伝染病と言われた当時から、変わらないな。
 口蹄疫(以下FMDVと言う)の過去2回の発生の時も、色々な人がひどい目に合わされているし。 開業の産業獣医も現地への応援に行けない縛りが発生しているし。 毎年出る食中毒感染症には、あまり気を使ってないような。 その割に、ノロで飲食店、旅館業は叩きまくられるのですが。ノロは制御は、無理だって。 二枚貝の生食を止めるるしかない。 放射線より、ウイルス、細菌の方がよほど厄介なのですが。 麻疹ウイルスで発症する亜急性硬化性全脳炎:SSPEのほうが遥かに危険ですし。麻疹ウイルスが減少している状況で、年間5から10人の発症は、少ないのか?。ムンプスでの永久難聴もですし。このようなリスクも考えた方がよいのですし。 既存の感染症の方が遥かに健康を脅かしているのですが。

 風土病と言われた日本住吸血虫の発生地域のような、過去の差別を受けなければならないのかね。
[ 2012/05/14 22:16 ] [ 編集 ]
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