ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

問題が大きい再生可能エネの買い取り価格

[ 2012/04/27 (金) ]
 経産省の「調達価格等算定委員会」(委員長=植田和弘京都大学教授)が再生可能エネルギーの買い取り価格と期間を決定した。
 今後、国民からの意見聴取(パブリックコメント)などを経て経産相が最終決定し、7月に制度が始まる。
 その内容と問題をまとめておきます。

再生可能エネの買い取り価格と期間(委員会案)

3年間
のIRR
調達価格
1kwhあたり
調達 
期間
業界が要望
した価格
太陽光
10kw以上
6%42円20年42円
太陽光(家庭用)
10kw未満
3.2%42円
(余剰買取方式を維持)
10年.
風力
20kw以上
8%23.1円20年22~25円
風力(小型)
20kw以上
1.8%57.57円20年50~55円
地熱
1.5万kw以上
13%27.3円15年25.8円
小中水力
1000~3万kw
7%25.2円20年24~34円
バイオマス
(リサイクル木材)
4%13.65円20年14~39円
 別添 調達区分・調達価格・調達期間についての調達価格等算定委員会案

法律
 
 電力会社は供給者から、上記の調達価格で調達期間、電力を買い取る契約を結ぶ。例えば初年度に契約すれば、上記の調達価格・調達期間が固定的に適用される。
 電力会社は電気の買い取りにかかった費用を、電気料金に上乗せする形で一般利用者から回収する。
 価格等については、経済産業大臣が毎年度、当該年度の開始前に定める。
 集中的に再生可能エネルギー電気の利用拡大を図るため、3年間は、例外的に、利潤に特に配慮*2する。

 発電コスト*1に利潤(表のIRR*2)を載せて算出。
  *1 ベースはコスト等検証委員会の試算結果。
  *2 1~2%程度を上乗せ(3年間経過後は、この上乗せ措置は廃止)
 事前に意見聴取した発電事業者の要望価格を上限値とした。

*1 12月のコスト等検証委員会の試算
 既エントリーより一部引用
コスト等検証委員会報告書(案)から抜粋
2010年
円/kWh
(下限~上限)
設備
利用率
稼働
年数
2030年
円/kWh
(下限)
原子力8.970%40年8.9
火力石油20.8~22.480%40年23.8
LNG10.7~11.180%40年10.9
石炭9.5~9.780%40年10.3
水力10.645%40年10.6
太陽光
メガ
ソーラー
30.1~45.812%20年12.1
(35年)
住宅33.4~38.312%20年9.9
(35年)
風力陸上9.9~17.320%20年8.8
洋上9.4~23.130%20年8.6
地熱9.2~11.680%40年9.2
小水力19.1~2260%40年.
 

問題点が大きい制度、買い取り価格

 当ブログは、法律の制定時から“異議あり”の立場である。
 菅前総理が退陣条件の一つとして法律の成立を上げ、エネルギー全体の政策がないままに、制度の導入が決まった。
 過去のエントリー
 ●再生可能エネルギーに頼れない理由 [2011/08/27]
 ●ドイツとスペインで失敗した全量固定価格買取制度 [2011/08/07 追記あり] ←追記に重要情報が。
 ●“再生エネルギー特別措置法”の目的・目標は? [2011/07/31]

 買い取り価格が出て、多くの識者が再度、問題を指摘している。
根本的なところでは、

「(全量買取り方式による)『固定価格買取制度』の導入による再生可能エネルギー・急拡大」が、日本のエネルギー供給制約の解決につながるかどうか、再生可能エネルギー市場の拡大を通じて日本の産業の成長に資するかどうかについては、十分に再考が必要な問題。


その他、いくつかをアーカイブします。

●WSJ 2012/4/24 【日本版コラム】太陽光買取42円は高過ぎる―相次ぐ電池メーカー破綻が示す環境激変 尾崎弘之教授
(部分的に引用)

 これは、最近悪名高くなった電力会社の「総括原価方式」と同様、太陽光の電力事業会社の利ザヤを保証する制度である。この買取価格が適正であれば問題ないが、そうとは言えない状況が世界の太陽電池市場で起きている。

大手太陽電池メーカーの相次ぐ破綻
 ドイツの太陽電池メーカー、Qセルズは今月、法的整理を申請する方針を明らかにした。
 また、Qセルズ破綻から時を空けずして米のソーラー・トラスト・オブ・アメリカも破産申請を発表。
 大手太陽電池メーカーの破綻は約半年前から急速に増えている。
昨年8月には、米のソリンドラが破綻し、スペクトラワットエバーグリーン・ソーラーなども経営に行き詰まり、BPソーラーは事業縮小を余儀なくされている。 ドイツでもQセルズ以外に、ソロンソーラー・ミレニアムなど、まさに破綻の連鎖が起きている。
 太陽電池の急激な値崩れと世界的な景気低迷によるクリーンエネルギーに対する公的な助成の減少が原因である。

すさまじい値崩れが続く太陽電池市場
 太陽電池の価格下落は、コスト競争力で勝る中国企業が世界市場を席巻していることが原因だ。
 中国勢はシェアは伸ばしているものの、彼らの実情も厳しい。現在、シェア世界トップのサンテックパワーの今年第1四半期の売上は前年同期比33.4%のマイナスで、純利益は9億9260万ドルという巨額の赤字と報道されている。急激な市場の値崩れはコスト競争力に勝る中国企業でさえ対処できない水準であることが分かる。

クリーンエネルギー助成の減少と太陽光発電推進への批判
 連続破綻が起きたもうひとつの要因は、クリーンエネルギーに対する公的な助成の減少である。先進国に共通する景気低迷により政府は補助金や減税を行う余裕がなくなっている。また、単なる財政状況の悪化以外に、太陽光発電に対する逆風となる事例が起きている。
 米国では、主要企業の経営破綻がオバマ政権への責任追及に発展している。
 ドイツでは、巨額の財政負担や電気料金値上げによる補助が行われてきたにもかかわらず、太陽光発電は利用率が低く、有効でないという批判が起きている。クリーンエネルギー助成の約60%が太陽光発電向けに使われているのに、全発電における比率はわずか3%に過ぎない。助成金がはるかに少ないバイオマスや風力発電の方が太陽光よりずっと比率が高いのである。

太陽光発電の買取価格に太陽電池の値崩れを反映させるべき
 まず、太陽電池の値崩れは太陽光発電のコスト算定に正しく反映されるべきである。問題は、1kw時あたり42円の買取価格が適正かどうかである。結論からいうと、この水準は高過ぎる
 参考のため、ドイツの太陽光発電システム価格(太陽電池、付属機器、設置工事を含んだ価格)も大きく値下がりしていることを付言する。また、フィードイン・タリフ(FIT:電力会社が発電事業者や家庭からクリーンエネルギーを買取る制度)の買取価格を見ても、1000kw以上、屋上設置の場合、3年間で51%も引き下げられている。
 発電事業者(メガソーラーなどを設置する企業)が過剰な利益を得ることにはならないか。買取価格の決定にはかなりの透明性が要求される。この点が軽視されると、太陽光バブルを作って、財政を悪化させるだけになりかねない。

全量買取制度はもはや時代遅れか
 ドイツの制度を見ると、FIT(日本の全量買取制度もこの一種)は今や存在意義がなくなりつつあることが分かる。ドイツがFITを推進した2000年代前半は太陽電池の価格も今よりはるかに高く、FITが整備されていないと、クリーンエネルギーなど普及しようがなかった。ところが、今は全く状況が違う。日本の全量買取制度は急速に時代遅れになりつつあるのかもしれない。


●「WEDGE Infinity(ウェッジ・インフィニティ)」2012/4/26 高すぎる自然エネルギー買取価格は業界を歪ませる 斉藤純夫
(冒頭部分のみ引用)

 買取は結局国民負担であり、国民が支えるビジネスであることを忘れていないだろうか、
 このまま突き進めば、一種の「バブル」となり、あるべき業界発展が阻まれる可能性もある。自然エネルギーの専門家が、見えてきた問題点を指摘する。


●「Openブログ」2012/5/20 太陽光買取り制度の破綻
●「Openブログ」2012/4/25 太陽光バブル

つぶやき

 そもそも成立の経緯からおかしな法律だが、これだけ(世界の実情に基づく)基本的な問題を指摘されている政策もめずらしいのではないか。
 民社党の悪しき実績として、原発事故対応を除けば、将来、ワースト3にランクされる失策になると懸念する。
[ 2012/04/27(金) ] カテゴリ: FIT認定制度に関する事 | CM(2)
Re: タイトルなし
情報、ありがとうございます。
全般的には秋月さんに同感です。
ただ、地熱のIRRが他より高いという指摘は、普及ドライブと事業リスクへの配慮から理解できる面はあるのですが。
(大問題は太陽光の42円なので、それに比べれば、という見方ですが)

大手メディアが静かなのが不思議です。
[ 2012/04/29 00:58 ] [ 編集 ]
東電の10%値上げで、大騒ぎであるのにです。 

秋月さん的にも
http://aruconsultant.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/40-1091.html
[ 2012/04/28 22:37 ] [ 編集 ]
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