ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

海底土の汚染メカニズム、セシウムの挙動などのまとめ

[ 2012/02/24 (金) ]
最新追記があります。2012/5/18


 Keyword:放射性物質,放射能,粒子状物質,懸濁物
 (前のエントリーと関連しますので、連投です)
 今後の海産物、特に底魚の汚染に対して、ポイントとなるのは海底土の汚染メカニズムとそれに関連するセシウムの挙動の様です。
 シリーズの最後として、それらをアーカイブします。
 今までの纏め的なものでもありますので、既エントリーからの再掲も結構あります。 

Ⅰ.海への、海域での、移行経路の全体像
 ここは既エントリーからの再掲です。(くどいですが。)

放射線科学Vol52 No3 2009             図の出典:放射線科学Vol52 No3 2009 日下部正志さん

1.前面海域、沿岸海域 
 原発からの汚染水の放出とフォールアウト。
 その後も、流域から阿武隈川などの河川を経由して、大雨が降って川の水が濁った時に泥の中に含まれるセシウムが海へ運ばれる。泥と一部の溶存態のセシウムは河口域での凝集沈殿に取り込まれ海底土の汚染になる。
 海底土の汚染は移動して行くが、沿岸流の影響を受け南側に流れる性質がある。
 
2.沖合海域
 フォールアウトおよび沿岸海域からの移流・拡散。
 さらに、海流により移流・拡散して行く。 

3.外洋海域 
 フォールアウトおよび沖合海域からの移流・拡散。
 さらに、海流により移流・拡散して行く。

(各海域の説明)
海域図               出典:こちら 一部をカットしてます。

Ⅱ.海底土の汚染の挙動
 ここは既エントリーの要約です。

1.前面海域、沿岸海域、(沖合海域)
 海底土の汚染は、陸上の汚染とは異なり、海流によって移動するのが特徴
 通常、阿武隈川の河川の水にはほとんどセシウムは含まれていない。大雨が降って川の水が濁った時に運ばれる泥の中にセシウムは大量に含まれている
 泥と一部の溶存態のセシウムは河口域での凝集沈殿に取り込まれ海底土の汚染になる。
 川から流れてきた水は、沿岸流によって南側に流れる性質がある。(海水との密度差と地球の回転の効果)
 従って、沿岸では海底土の汚染も南に向かっていく傾向がある。

2.(沖合海域)、外洋海域
 鉛直方向への拡散は、主に沈降粒子(マリンスノー)という形での沈降によるもので、海底土の汚染となる沈降粒子(マリンスノー)は、プランクトンのフンや死骸、粘液などに鉱物などが付着してできる粒子で、大きさは1mmにも満たないものがほとんど。ただし、遠洋の深海で起こっていることと、沿岸で起こっていることは同じでない可能性がある。

Ⅲ.粒子吸着と海底堆積など
出典:●東日本大震災に対するJAMSTECの緊急的調査活動及び海域における放射能濃度シミュレーションについて2011/9/2 海洋研究開発機構 菊池聰 

粒子吸着と海底堆積

Ⅳ.分配係数 Kd値

 海底土の汚染では、分配係数(Kd)=海底堆積物中濃度/海水中濃度 が重要の様である。
 様々な元素についての研究結果があるが、セシウムCsとストロンチウムSrについてのみ抜粋する。
分配係数(Kd)=海底堆積物中濃度/海水中濃度
海底堆積物海岸砂
Cs100~1000100
Sr10
 出典:環境パラメータ・シリーズ No6 海洋生物への放射性物質の移行 表2-3-1-2 (原子力環境センター)

 Csの1000で例えれば、海底土で4000Bq/kg(乾土)の時に、海底直上の海水または水深の極めて浅い沿岸海域での海水が4Bq/Lとなって平衡状態(定常状態)にある、という事になる。
 ただし、分配係数 Kdには注意すべき事が色々ある。
(1) 海水から堆積物への移行には不可逆的な蓄積の部分が多く、長期間後の予測に適用することが望ましい。(2~3年のオーダーか?)
(2) 海中沈降粒子には、その起源が陸上の鉱物粒子と海中で生産された生物起源粒子があり、両者はKd値が全く異なるのみならず、単独にまたは相互に凝集・解離を繰り返しつつ沈降するとされているので海中沈降粒子に対し画一的なKd値を与えることは困難である。
(3) 外洋の場合には、水中濃度の鉛直分布も問題になる。
(4) 堆積物への放射性核種の蓄積は、粒子表面での反応であるから、粒子の表面積=サイズに大きく影響される。すなわち粒子径が小さいほどKd値は大きい(比表面積が大きいため)

 原典の理解にあたっては、TSOKDBAさんの解説が大変、参考になりました。
●「3.11東日本大震災後の日本」11/8 海底土の汚染と海水の汚染の関係について その1

Ⅴ.海底土と陸上の土壌の共通性

 分子レベルのセシウムの挙動に関しては、同じ事が言える様である。陸上土壌に関連する情報を2例紹介する。

1.細かい粒子ほど、セシウムを良く捕捉する。
 既エントリー
 ●放射性セシウムの吸入による内部被ばく、セシウムの土壌付着

2.粘土鉱物分とくにフレイド・エッジ(Frayed Edge)を持つ雲母類がセシウムを良く捕捉する。

 土壌中で放射性セシウムは主に1価の陽イオン(Cs+)として存在する。土壌中には粘土鉱物や有機物等の表面に多数の負電荷が存在しており、他の重金属類や陽イオンと同様に、放射性セシウムはこれらの負電荷に吸着する(イオン交換態)。その中でもフレイド・エッジと呼ばれる風化した雲母類の外縁部分に存在する層荷電部分は、セシウムを強く吸着する性質を持つ*1。例えば井上らにより推定された17種類の土壌の放射性セシウムの分配係数は200ml/g(砂質土)~8,000ml/g(シルト質土)であり、土壌への吸着能が非常に高い
 この性質は今回の事故により土壌に沈着した放射性セシウム汚染土壌でも同様であり、国立環境研究所が実施した2種類の放射性セシウム汚染土壌(134Cs+137Csで14,250Bq/kg~16,770Bq/kg)の溶出試験(水を溶媒とし、固液比1:10で6時間振とう)の結果、土壌から水への溶出量は定量下限値(約20Bq/L)未満、溶出率で約1%未満であること、さらに筆者らの実施した溶出試験(未公開)においても溶出率は2%未満と同様の結果を示していることから、水に容易に溶け出さないことが確認されている。また農林水産省が実施した酢酸アンモニウム溶出試験(植物による吸収においても重要な要素であるイオン交換態で存在する量の目安となる)でも飯舘村の農地土壌で溶出率が2.3%~5.3%であることが確認されており、水に溶出しにくいだけでなく土中水中に溶解して比較的移動しやすいイオン交換態としての存在量が少ないことも確認されている。一般に土壌中では汚染物質は主に水に溶解した状態で水の移動ととともに移動するが、土壌への吸着能が高い放射性セシウムは土壌中での移動性が低いのである。
 実際、筆者らが事故後4ヶ月経過した7月に郡山市内で深度方向の放射性セシウム濃度を調査した結果、80%以上の放射性セシウムが地表面から1㎝に残存していることが確認されている。9月、11月、12月にも福島県内の複数地点で同様の調査を実施しているが傾向は変わらないこと、福島県内の農地においても同様の結果が報告されていることから、地表面に沈着した放射性セシウムの大部分は土壌表面付近に残存していると推察される。

 *1ブログ主注:2:1型層状ケイ酸塩(粘土鉱物)の一種、詳細は放射性セシウムが土壌に固定されるメカニズム←これは少し難しい

  既エントリーから転記

Ⅵ.海底土から海産物への移行、その他
 ここは既エントリーからの再掲です。

●日本海洋学会 東日本大震災関連特設サイト 種々の疑問に関する専門家の意見
4.海底堆積物への蓄積
<回答:森田貴己さん(水産庁研究管理官)>
 もっと調べれば論文があると思いますが、私の手許にある論文は、J. Radiat. Res., 19, 93-99 (1978)ぐらいです。この中では、海底土からのセシウム137の移行割合(海産物中の濃度/海底土中の濃度)は、ゴカイ(汽水性:注:汽水とは海水と淡水が混じった水のこと)0.179、海藻(紅藻類)0.069、二枚貝0.045 と示されています。また、私自身が以前深海性ナマコ中のセシウム137を測定したことがありますが、ナマコの体の中の泥のセシウム137濃度は、ナマコを採集した地点の海底土中のセシウム137濃度とほぼ同じであり、ナマコ被のう中のセシウム137は、体中や周辺の海底土中の濃度の約0.04 でした。陸上の土壌中ではセシウム137はかなり強く粘土に吸着するらしいので、海底土中でも同様に強く吸着しているのか、海産物への移行はこのぐらいです。ただ、今回は非常に高濃度のセシウム137 が海底土から検出されていますし、十分に吸着する前に海産物に取り込まれる可能性も否定できないので、底魚の調査は、かなり重視しています。

 既エントリー

●1/30福島県水産試験場 放射性セシウムの局在性に関する調査
キアンコウでは、の放射性セシウムは筋肉の1/2~1/6程度。
マダラでは、の放射性セシウムは筋肉の1/6程度。
その他、エゾイソアイナメの、イシガレイの肝、卵巣などについても調査

第2回いわきサイエンスカフェ~いわきの海と魚を語ろう~より
Q:底魚はどれくらい移動するのでしょうか?
A:これまでの調査では、多くの魚種が広範囲に移動していることがわかっています。例えばアンコウは、青森県で放流したものが、福島・茨城で捕獲されることもあるため、かなり広範囲に移動していると考えられます。

 既エントリー


Ⅶ.セシウムに関する色々な係数のまとめ

濃縮係数
(濃縮度)
魚内の濃度
――――――
海水の濃度
50~100
*1
分配係数(Kd)海底土の濃度
――――――
海水の濃度
100~1000
海底土からの
移行割合の例
海産物の濃度
――――――
海底土の濃度
ゴカイ:0.179
海藻(紅藻類):0.069
二枚貝:0.045
 *1:詳細は既エントリー

つぶやき

 一連のエントリーを書いて、海産物の汚染に関する基本的な情報と現状の汚染レベルの概略が理解できました。
 水産庁ほかサンプリング魚(福島県及び近隣県の主要港)の汚染は、浮魚などはすでに低下したものもある一方で、今後にピークを迎えるものもあります。海水の汚染レベルが低下傾向にある事から、サンプリング魚の汚染も低下していくと思われますが、少し時間が掛かりそうなものもあります。
 流通魚でも気になる方は、魚種ごとのサンプリング魚の汚染傾向を見ておく事で、気にするレベルの目途となるかも知れません。(実際の現状の食事全体では、摂取するセシウムがかなり少ないというデータが最近、相次いで発表されている中で、魚単独の汚染にどの程度の注意をはらうかは、人それぞれです。)
 今後のポイントとなるのは海底土の汚染とそれに関連するセシウムの挙動です。
 海底土の汚染が○○Bq/kgというニュースや情報に対して、(初期の汚染水の放出を別にすれば)陸上に降下したセシウムが河川流域から海に流れて最終的に海底土に溜まるのは自然の摂理でしかたがない事であり、本来は分配係数 Kd値が重要なファクターである事が判りました。
 海に流れたセシウムが、できれば、Kd値の高い海底土壌で静かに減衰していってもらいたい、と思ってしまいますが、本ブログは科学的な面を標榜しているので、今後も長期でのモニタリングと研究に注目です。
(検索した感覚では、地上の土壌関係の文献・情報に比べると、海底土の関係は少ない気がしました。サンプリングが簡単にはできない事などの背景もあるのでしょうが。)



 “このエントリーの説明は、現段階はであくまでも仮説です”の事だが、最新知見や図版が充実している。
 ちなみに記事の中で、本エントリーが“(参考)これまでの基礎的な知見の良まとめ”として紹介戴きました。(本ブログの記事はコンタンさんやTSOKDBAさんからの引用が多いので恐縮です)


 参考情報としてアーカイブ。海洋研究開発機構によるシミュレーションである。
 原典資料はネット上には見当たらず、計算の仮定などは不明で、確からしさも不明。
 (さらに、河川流域から海に流出した量が判れば、良いのだが、、、)

 原発から海に流出した放射性セシウムCs137の総量
 (記事にはセシウム137と書いてあるので)
A:大気中に放出後
雨などで海に沈着
B:高濃度汚染水
の流出
A:B
最小
から
最大
テラ
ベクレル
1200 TBq
から
1500 TBq
4200 TBq
から
5600 TBq
 1:3.5  

 1:3.7  
中央値グラム420 g1500 g.


【最新追記】
「水産総合研究センター」2012/5/15 水生生物における放射性物質の挙動について

 調査船調査等により入手した魚介藻類試料とその餌料生物試料(プランクトンやベントス)等2,284検体の放射性物質濃度を分析しました。現在、得られたデータと他機関による公表データとを合わせてより詳細な解析を行っているところですが、現時点で得られた調査結果をお知らせします。



 関連エントリーはカテゴリーにひとまとめにしています。記事下部or左欄のリンクから、どうぞ。
[ 2012/02/24(金) ] カテゴリ: 海産物への影響,被害に関 | CM(0)
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