ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

放射性セシウムの環境中での挙動、判りやすい資料

[ 2012/01/17 (火) ]
 残念な事ではあるが、放射性セシウムCsとは、今後、長く付き合わなくてはならない。
 今回、こちらのブログ記事により、下記の資料に巡り合った。
 放射性セシウムの環境中での挙動、農作物への影響、土壌中の放射性物質の対策の考え方、放射性物質汚染土壌の除去と課題、などの内容で、素人のブログ主にとって判り易く、かつ、全貌を網羅した素晴らしい資料であった。
 ●放射性物質の土壌中での挙動及び農作物への影響:対策の整理と課題(1月9日版)
 (独)産業技術総合研究所 地質分野 地圏資源環境研究部門 地圏環境リスクGの保高徹生さんがご自身のサイトで公開している資料である。

 内容の項目の紹介とごく一部の引用をさせて頂く。詳細は原文を参照頂きたい。

この資料について(サイトから引用)

 農業と経済の 2012年1月臨時増刊号「放射性物質と食品・健康リスク―消費者心理にどう答えるか」に寄稿した「放射性物質の土壌中での挙動及び農作物への影響―対策の整理と課題」という原稿を大幅改訂したものをアップロードしました。
 一定期間ごとに中身を更新していく予定です。



記載されている項目紹介とごく一部の引用

1.はじめに

2.放射性物質の地表面への沈着

3.土壌中における放射性物質の挙動

 地表面に沈着した放射性物質は、
①自己崩壊に伴う濃度減衰、
②土壌中での移動、
③風雨による飛散・流出、
④植物等による吸収、
により、その濃度を変化させ、環境媒体中を移動する。
 土壌中で放射性セシウムは主に1価の陽イオン(Cs+)として存在する。土壌中には粘土鉱物や有機物等の表面に多数の負電荷が存在しており、他の重金属類や陽イオンと同様に、放射性セシウムはこれらの負電荷に吸着する(イオン交換態)。その中でもフレイド・エッジと呼ばれる風化した雲母類の外縁部分に存在する層荷電部分は、セシウムを強く吸着する性質を持つ*1。例えば井上らにより推定された17種類の土壌の放射性セシウムの分配係数は200ml/g(砂質土)~8,000ml/g(シルト質土)であり、土壌への吸着能が非常に高い
 この性質は今回の事故により土壌に沈着した放射性セシウム汚染土壌でも同様であり、 国立環境研究所が実施した2種類の放射性セシウム汚染土壌(134Cs+137Csで14,250Bq/kg~16,770Bq/kg)の溶出試験(水を溶媒とし、固液比1:10で6時間振とう)の結果、土壌から水への溶出量は定量下限値(約20Bq/L)未満、溶出率で約1%未満であること、さらに筆者らの実施した溶出試験(未公開)においても溶出率は2%未満と同様の結果を示していることから、水に容易に溶け出さないことが確認されている。また農林水産省が実施した酢酸アンモニウム溶出試験(植物による吸収においても重要な要素であるイオン交換態で存在する量の目安となる)でも飯舘村の農地土壌で溶出率が2.3%~5.3%であることが確認されており、水に溶出しにくいだけでなく土中水中に溶解して比較的移動しやすいイオン交換態としての存在量が少ないことも確認されている。一般に土壌中では汚染物質は主に水に溶解した状態で水の移動ととともに移動するが、土壌への吸着能が高い放射性セシウムは土壌中での移動性が低いのである。
 実際、筆者らが事故後4ヶ月経過した7月に郡山市内で深度方向の放射性セシウム濃度を調査した結果、80%以上の放射性セシウムが地表面から1㎝に残存していることが確認されている。9月、11月、12月にも福島県内の複数地点で同様の調査を実施しているが傾向は変わらないこと、福島県内の農地においても同様の結果が報告されていることから、地表面に沈着した放射性セシウムの大部分は土壌表面付近に残存していると推察される。

 *1ブログ主注:2:1型層状ケイ酸塩(粘土鉱物)の一種、詳細は放射性セシウムが土壌に固定されるメカニズム

4.農作物への影響:放射性物質の吸収経路
 放射性物質の植物への吸収は主に2つの経路がある。葉面や樹皮に沈着した放射性物質がそこから吸収される経路(以下、直接吸収経路)と土壌に沈着した放射性物質が根から吸収される経路(以下、経根吸収経路)である。

5.農作物中の濃度と現状
 野菜の放射性セシウム濃度(図6)は、3月には定量下限値以上の放射性セシウムが60%以上で検出、15%以上で暫定規制値(500Bq/kg)を超過していたが濃度は徐々に低減し、6月以降は96%以上で定量下限値(通常1~20Bq/kg程度)未満となった。これは先に述べたホウレンソウ(図4)と同様の傾向であり、多くの野菜は経根吸収経路の寄与は少ないと推察される。

6.土壌中の放射性物質の対策の考え方
6.1.放射性物質汚染土壌からの被ばく経路と被ばく量
 放射性物質汚染土壌が原因で人が被ばくする主な経路は、
(ア)汚染土壌からの放射線による外部被ばくの経路、
(イ)土粒子飛散に伴う汚染土壌の経口摂取・吸入皮膚接触による内部被ばくの経路、
(ウ)汚染土壌中の放射性セシウムを吸収した農作物の経口摂取による内部被ばくの経路、
である(図9)。

6.2.放射性物質汚染土壌に対する措置方法の分類
 放射性物質汚染土壌による(ア)の経路による被ばく量の低減方法としては、大きく「制度管理」、「原位置管理」、「原位置処理」、「汚染の除去」の4つに分類される。
図10
      図10放射性物質汚染土壌の措置の分類と概念図。
I.「制度管理」
 対象地に汚染土壌を残したまま、立入禁止等の規制を行うことで被ばく量を低減する方法。計画的避難区域や警戒区域の指定による立入禁止・制限措置がこれに該当する。
II.「原位置管理」
 対象地に汚染土壌を残したまま、覆土や天地返しにより空間線量を低減し、被ばく量を低減する方法。
III.「原位置処理」
 対象地から汚染土壌そのものは除去せず、原位置で放射性物質の除去を行うことで放射性物質濃度を低減する方法。水田における水による土壌撹拌・除去やファイトレメディエーションなどの措置技術が存在する。
IV.「汚染の除去」
 汚染土壌を除去することで、対象地の放射性物質濃度や空間線量を低減する方法。「土壌除去」、「減容化」、「保管・管理」の3つの段階から構成される。土壌の除去後、「減容化」をせず、そのまま汚染土壌を保管・管理するパターンと、土壌の除去後、汚染土壌から放射性セシウムを除去する「減容化」をした上で濃縮物を保管・管理するパターンがある。
 ここで述べた対策方法は、措置の段階(緊急時、安定時等)に応じて使い分けることが重要となる。

7.放射性物質汚染土壌の除去と課題
7.1.放射性物質汚染土壌の除去のフレームワーク
 放射性物質汚染土壌の除去は、汚染土壌を除去する(1)土壌除去技術とともに、(2)減容化技術、(3)保管・管理技術、(4)再利用技術を合わせて考えることが重要である。
図11
   図11放射性物質汚染土壌の除去におけるフレームワーク

7.2.土壌除去技術
 放射性物質汚染土壌の土壌除去技術は、基本的には表土剥ぎとりを行うものである。

7.3.減容化技術
 放射性物質汚染土壌の減容化技術としては、土壌洗浄法や土壌抽出法などがある。

7.4.減容化技術の課題と処理の考え方
 放射性物質汚染土壌の除去において減容化の適用を検討する際には、原土壌濃度、土壌性質、浄化後の濃縮物と浄化土の濃度を勘案した上で、複数の減容化オプション(減容化技術の選定、減容化を適用する濃度範囲の選定など、減容化をしない場合も含む)を保管場所容量、全体のコストを含めて評価し、意思決定を行うことが必要と考えられる。

8.おわりに–課題とまとめ–
 本稿が皆さまの放射性物質汚染土壌の理解の一助につながれば幸いである。



つぶやき

 “食品汚染”や“除染”に関して、様々な情報があるし、専門家の意見も異なっている部分がある。
 セシウムの挙動などについて少し勉強して、情報の取捨選択をできるようにしないと、と思っていたが、本資料はその意味で、大変に有効なものであった。


関連エントリー

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●【改定】核分裂、放射線、ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)、人体への影響
[ 2012/01/17(火) ] カテゴリ: 放射性物質の環境中の挙動 | CM(0)
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