ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

トンデル論文の概要とバスビー教授の恣意的な誤用、判りやすい解説

[ 2012/01/09 (月) ]
 (財)ルイ・パストゥール医学研究センター 分子免疫研究所 藤田哲也所長がトンデル論文の概要とバスビー教授らがそれを恣意的に誤用した事について、判り易く解説されているので、アーカイブさせていただきます。


【 6~7ページの当該部分を引用】 (改行と太字はブログ主が加工)

 しかし、実はこのような放射線への創られた恐怖情報は日本だけではありません。ヨーロッパでも全く同じと言える誤解がまことしやかに広められています。
 ただ、この研究をおこなったスウェーデンのトンデルさんやリンドグレンさんが悪いのではありません。放射線とヒト癌の発生についての知識を欠いているのに両者の因果関係を結論しょうとした人たちが周りにいたのが間違いだっただけです。

 チェルノブイリのすぐ風下にあったスウェーデンでは、1986年の原発事故後、2日間続いた豪雨によって空中のセシウム137が大量に降下しました。 トンデルさんらは汚染の高度な地区に住んでいた60歳以下の113万7,106人について汚染地図をもとに被爆量を算定し、スウェーデンの完備した癌登録制度を活用して1988年から1999年に診断された3万3,851件の悪性腫瘍と汚染度との関連を統計的手段を活用しながら推算しました。

 その結果、「チェルノブイリ事故2年後から4年問は癌と診断された人の数は平時に比べて有意に増加した。ただし、この間にも甲状腺癌や白血病が増えたという証拠はない。しかし、これに続く8年間には、どのタイプの癌症例にも有意の増加はなかった。」と報告しているのです。
 被爆後2年目から11年目までの内、最初の4年問だけ悪性腫瘍の有意の増加があったというのは、ヒト癌の発生と自然史の経過を考慮に入れると(図3)、先に指摘したのと全く同じように、スウェーデンのこの時期の汚染の増加は、癌を発生させたかどうかという観点からみて、全く関係がないと言えることは明らかです。
 この汚染地域でも、最初の6年間、住人は自らの酪農産物の摂取制限はもちろん、市販も制限され、多くは元のコミュニティを引き払って退去・疎開を強制されるチャンスも多かったことと考えられます。だから、実際に癌の発生が増加したとは考えられませんが、当然、このストレスが自然免疫の低下を介して進行期(ないし末期)にあった癌患者のQOLの悪化、病勢の急速な進行など、癌の顕在化や癌死の増加として癌登録データの上に癌患者の数的増加の形で現れたものと推定されます。

 トンデルさんたちも、これが真の癌発生事象の増加とは考えておらず、プロモーション(促進現象)が強化された結果、既に存在していた癌の病勢が速く進行したのではなかろうかという推察を述べています。

 しかし、驚くべきことに、多くの日本の学者が、トンデルさんのデータをもって、「原子炉爆発後の低線量の被曝は、間違いなく多くの悪性腫瘍を発生させる」証拠であるとして癌の恐怖を煽るような言動を示しているのです。これは大きな過ちであると私は考えます。しかし、これは日本人だけではありません。
 ECRR(欧州放射線リスク委員会)に属しているバズビーさんというイギリスの学者などは、もっと高圧的で、トンデルさんらの論文を根拠に推算し、「今後、癌の発症例は10年間で10万人に及ぶだろう、福島原発から20km以内に住む人々をいま直ちに退避させれば、この人数は著しく減らせるだろう。IAEAは日本の文部科学省のデータを使い、汚染レベルを著しく低く報告している。今後、あらゆる政治的判断はECRR(欧州放射線リスク委員会)の勧告をもとになされるべきである。今回の事故において故意にデータを公表しないものや、健康への影害を過小評価するメディアについては調査し、法的制裁を加えるべきである。」と、脅迫的ともとれる発言を公的にしているのです。
 これらの学者はトンデルさんの論文の結論を、「低線量でも癌が増える」としているのですが、これは、とんでもない誤解です。癌発生の自然史を考慮に入れれば、このような結論には全くもって達しませんし、トンデルさんたちもそんな結論を出しているわけではないのです。


【追記】
 パストゥール研のHPに関連文献の案内が出ました。
 個別にもアーカイブさせていただきます。


つぶやき

 ●素人のブログ主が今までに読んだなかで、一番、判りやすい解説でした。
 ●今まで接していた情報で、Tondel論文に対する懐疑論は結構あるが、そのまた反論もあるので、どうなんだろうと思っていた。今回の、“論文そのものの合理性の問題ではなく、ECRRやバスビー教授は、それを独自に解釈(恣意的に誤用)している”との指摘を信頼します。
 情報を見直したり検索したりすると、今までも、その様な情報は結構あります。(お恥ずかしいかぎり


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[ 2012/01/09(月) ] カテゴリ: 怪しい放射線論文 | CM(0)
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