ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

被災地瓦礫(がれき)の焼却処理で、放射性セシウムが煙突から拡散するか?

[ 2012/01/04 (水) ]
 広域焼却処理する災害廃棄物や、福島県内で処理する放射性物質を含む廃棄物を焼却した時に、放射性セシウムが煙突からばら撒かれ汚染が広まるという不安を持たれていたり、広域焼却処理の反対運動の理由にしたりしているので、調べてみました。

 情報の出典は、(資料3)放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処分 (独)国立環境研究所 (2011/12/2 第1版)

1.気化したセシウムは凝縮し、ばいじんに吸着している

(36ページから引用)

 放射性セシウムは、800~850℃以上の炉内で一部は揮発したり液化すると考えられ、揮発あるいは液化した放射性セシウムは、排ガスの冷却過程で凝結し、ばいじんに吸着していると考えられます。それは、セシウムの沸点が約650℃、塩化セシウムの形態をとっても沸点は約1300℃*であることから、約200℃以下に制御されているバグフィルター付近ではばいじんに吸着していると考えてよいと思われます。
 京都大学の高岡教授の安定セシウムに関する調査結果でも、バグフィルター前で固体状が99.9%、ガス態が0.1%であったことが報告されている。
 これまでの煙突出口での放射性セシウムの測定結果でも、サンプリング装置において最も上流部の円筒ろ紙で検出されており、その後のドレン部や活性炭部では検出された例はなく、ガス態では存在しないことを示しています。

 * ●セシウムCsの一般的な物性

【つぶやき】
 もし、排ガス温度が高い、すなわち良質な熱エネルギであれば、それで発電とか排熱回収とかするはずです。


【追記】
●「小波の京女日記」2012/03/28 セシウムの沸点は使えないデータ
 少々、難しいですが、化学的に明快な筋の通った素晴らしい解説。お勧めです。
 この説明によっても、ガス態で大気中に出て行かないことが判ります。

2.排ガスの基準と実態

(1) (36ページを元にブログ主まとめ)

災害廃棄物焼却時の
排ガス基準
Cs13730 Bq/m3
Cs13420 Bq/m3

 この濃度限度は、同一人が0歳児から70歳になるまでの間、当該濃度の放射性物質を含む空気を摂取したとしても、被ばく線量が1mSv/年(一般公衆の許容値)以下となるよう設定されたもの。


(2) 東京都のデータ

 ●震災後の焼却排ガス (参考データ)
施設
排ガス
東京二十三区
清掃一部事務組合
20検出せず
多摩地域市町村
・一部事務組合
17検出せず
産業廃棄物処理業者13

 ●岩手県宮古市の被災廃棄物の焼却時の排ガス 測定日:11/12
排ガス Bq/m
Cs137
( )内は検出下限値
検出せず 
( 0.52)
Cs134
( )内は検出下限値
検出せず 
(0.31 )


3.ばいじんの除去

(1) 36ページから引用

 バグフィルター設置の施設では高効率な除去率(99.9%以上)が確保されていると考えられます。ばいじんの平均粒径は数十ミクロンメータといわれますが、バグフィルターではサブミクロンメータの粒子をカットできることから、バグフィルターの性能が十分発揮されていれば、ほぼ完全に放射性セシウムを除去できます


【つぶやき】
 焼却場の放射性物質のデータで、飛灰(焼却時に排ガスフィルターなどに集められる灰)のセシウムが高いのはこのためですね。


(2) バグフィルターとは (参考)
 個別の焼却場で違いがあるのかも知れませんが、判りやすい図があったので、参考までに。

 バグフィルターは、排ガス中の有害な物質やばいじんを取り除き、きれいにする装置です。仕組みは掃除機のフィルターと同じで、汚れた排ガスを吸い込み、布状のフィルターでろ過し、きれいな空気にして排出するものです。布状のフィルターは筒の形をしており、この施設では約2000本も設置されています。
 バグフィルター

出典:小平・村山・大和衛生組合

【つぶやき】
 この分野は日本が得意とする環境技術のようです。


4.放射性セシウムと安定セシウムの違い

 吸着やろ過といった通常の化学工学的操作では、放射性セシウムと安定セシウムは全く同じ振る舞いをします。
 “バグフィルターで安定セシウムでのデータがあっても、放射性セシウムは違うので信用できない”と、一部のメディアや科学的知識がありそうな専門家から発信されているのも目にしますが、科学的な間違いです。

【間違い報道の一例】 東京新聞・中日新聞 1/21「見切り発車」の災害がれき処理

(前略)
 この時点で、放射能汚染がれきを実際に焼却炉で燃やしたデータはなかった。環境省によれば、その主な根拠は、検討会委員の大迫政浩・国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター長が同会に提出した資料だった。
(中略)
 もう一つが「一般廃棄物焼却施設の排ガス処理装置におけるセシウム、ストロンチウムの除去挙動」と題した論文だ。2009年秋、バグフィルターを備えた「A自治体」の焼却炉で測定したところ、セシウムの除去率は「99.99%」という。だが、ここに登場するのは放射能を持たない「安定セシウム」と「安定ストロンチウム」。そもそも放射性物質をテーマにした実験ではないのだ。
(後略)


【つぶやき】
 一般の方はやむを得ないとしても、情報地位の高い方々が勉強不足のまま発信するのは困ったものです。


5.つぶやき

 そもそも、広域焼却処理*する災害廃棄物の放射性物質は、かなり少ないことが、東京都のデータからも判っていて、受け入れているのは「放射能がれき」ではなく「震災がれき」なのですが、たとえ、かなり多くの放射性物質を含んだとしても、放射性セシウムが煙突から拡散は、心配しなくて良いようです。

 被災地の復旧のため、被災地瓦礫(がれき)の広域処理*を、ぜひ進めてもらいたいです。

* 東北地方において膨大な量の災害廃棄物の処理が進まず、復旧に向けた支障となっている。宮城県で通常のごみ排出量の19年分、岩手県で11年分もある。広域処理の対象はこの2県で、福島県は対象外である。
詳細は以下のエントリーを参照ください。
●【改01】震災がれき(瓦礫)の広域処理、計画と実績、皆さんの意見
がれき関連エントリーへのリンクも上記にまとめてあります。)

 (空中散布などと言って)放射性セシウムの煙突からの拡散を理由に反対を叫ぶのは、流言かデマに近いと言えるでしょう。


◇流言とデマの違い◇

(前略)
 両者は厳密には区別されます。
流言は「根拠が不確かでありながらも広がってしまう情報」のことであり、
デマは「政治的な意図を持ち、相手を貶めるために流される情報」のことです。
ただ、現在の日本では、多くの方は両者をあまり区別せずに用いているので、私もメディアなどで発言する場合は、わかりやすく「デマ」と統一して両者を論じることもしばしばあります。
(中略)
 「悪意の有無」といった基準では、流言とデマを初期段階でしか区別できません。
最初の一人がデマのつもりで流したものでも、広がっている過程で情報元、ソースが明示されなければ、それは流言と基本的に変わらないわけです。
また逆に、広がってきた流言をあえて悪意を持って流す人もいるでしょうから、デマと流言の明確な区別というのは難しい。

 出典は●SYNODOS JOURNAL 5/20 なぜ、今、流言研究か 荻上チキ

[ 2012/01/04(水) ] カテゴリ: 瓦礫(がれき)の処理 | CM(7)
goodコメントなので、Re: デマとドグマ
あまりにも良いコメント内容でしたので、下記記事にコピーしました。
そちらに返しコメント(貧弱内容ですが)をしました。
http://icchou20.blog94.fc2.com/blog-entry-215.html#comment88
[ 2012/01/29 00:06 ] [ 編集 ]
デマとドグマ
私も放射能デマには疲れ切っていますが、以下の記事を読んでドグマという問題もあるのかな・・と思いました。

http://news.goo.ne.jp/article/newsengw/world/newsengw-20120125-01.html

「原発は100%安全でなくてはならない」という強迫観念が必要な対策をおろそかにした要因であるという意見は良くでますよね。

「原発は危険なので、瓦礫も危険なはずだ、福島の人々に健康被害が出るはずだ」という反原発思想から出る思い込みも、多くの人を傷つけていると思います。

新型(豚)インフルエンザでも原発でも、人々の話題に上る時はとても危険なように見えますが、本当のリスクは数字通りでしかないし、その数字より感情に従うとよりリスクが高まります。

また、全ての科学技術は危険で、使うべきものと捨てるべきものは簡単に分けることができません。
http://blogs.yahoo.co.jp/bloom_komichi/64752518.html
[ 2012/01/28 17:26 ] [ 編集 ]
Re: Re: ご指摘ありがとうございます
コメント送信後、見させて戴いたら、修正されている事を確認いたしました。
送信前に確認せず、行き違いになってしまい、申し訳ありません。
お手数をおかけしました。
今後とも、よろしくお願いします。
[ 2012/01/28 14:10 ] [ 編集 ]
Re: ご指摘ありがとうございます
お忙しい中で、記事を読んで戴いた上に、感想コメントも戴き、ありがとうございました。
恐縮しております。

>“ゼロリスクを求める気持ち”を否定するだけでなく理解しようとすることも必要ではないでしょうか?
追記しました当該記事の最後の方にある“安斎先生の受け売り”の部分を読んで戴ければ、私の考えがお判り戴けると思います。

これからも、お互いに個人のブログですので、その中で、主義・主張を自由に発信して行けば良いと思っております。
なお、本文の追記中の“がありそうな専門家(たとえば医師など)”は書きすぎの感がありましたので、( )内を削除いたしました。

話を元に戻して恐縮ですが、昨日の私のコメントの1項は、科学的な情報の取扱のルールに合っていないのでは?と言う事です。
私は記事をできるだけ科学的に書こうと努めているつもりなので、大げさだと思われるかも知れませんが、こだわりを持っております。
[ 2012/01/28 13:57 ] [ 編集 ]
ご指摘ありがとうございます
ゼロリスクの追求~の項、読ませていただきました。
大気圏核実験の影響もありますから、放射能にゼロを求めても仕方がない、というのもわかります。
それでも母親が子供に対してゼロリスクを求める気持ちは、私にはよく理解できます。
自分より大切に思える存在に、少しでも体に悪いものは食べさせたくないという気持ちです。(そう思わない親御さんもたくさんいますが)
放射能にだけゼロリスクを求めるというのも確かにおかしな話です。
ただ放射線を気にしているお母さん達は、もともと食の安全に対して意識の高い人達が多いことも確かです。
私も子供が産まれてからは農薬や添加物には注意してきました。(以前はひどい食生活でした)
今でも、自分は被曝しても構わないとも思っています。

ゼロリスクについて語るなら、“ゼロリスクを求める気持ち”を否定するだけでなく理解しようとすることも必要ではないでしょうか?

今、日本は「放射能安全派と危険派」「国と国民」「農家と消費者」「がれき焼却賛成派と反対派」など、様々な点で対立があり何が正しいのか分からない状況にあります。
 この混迷や対立を生み出したのは原発であり放射能だと思います。原発がなければ復興も今よりはスムーズに進んだことでしょう。
 未来の世代では二度とこんなことを繰り返してほしくない。それが私が原発に反対する一つの理由でもあります。
 ブログ初心者の私にいろいろと教えていただき感謝しています。
[ 2012/01/28 10:43 ] [ 編集 ]
Re: がれき焼却について
関口様、コメントありがとうございます。
また、速やかで素敵な対応だと思いました。
ただし、いくつか意見を述べさせていただきます。

1.科学論議的な事
本記事では、文献引用とデータ引用はセットで主張を述べています。
従って、記事を引用されながら、「データが信用できるかどうかはおいておきます」と書かれると、チョット待ってよ、になります。
データに言及するのであれば、(リンクしてある)東京都のデータは○○で△△だと思う、などと書かれれば良いかと思います。
または、原典を直接引用されたらいかがですか。

2.バグフィルターの不具合や損傷の可能性
一般の公害防止システムと同様で、トラブル発生を否定するものはありませんが、トラブルが起きた時には排ガスの測定値に異常がでるのでは、などと考えています。
そのリスクをどこまで追及するのかと言う“リスクゼロ志向”と次項に記載した“思い”とのてんびんですので、関口様の記事の記載を否定するものではありません。

3.がれき処理の目的に対する“思い”について
これは、議論にならないと思いますので補足のみです。
私の“思い”は「5.つぶやき」の2つのリンク記事のほか、下記の記事のとおりです。
『“放射線ゼロリスクの追及”を止めないと復興・復旧が進まない、皆が幸せに暮せない』
http://icchou20.blog94.fc2.com/blog-entry-215.html
(このリンクは今回、記事にも追記しました)
[ 2012/01/27 18:13 ] [ 編集 ]
がれき焼却について
icchouさんの記事をリンクさせていただきました。ありがとうございました。
icchouさんがいうように、フィルターが完全に機能していればセシウムは除去できるのでしょう。しかし、フィルターが壊れればセシウムは大気中に放出される可能性があるわけです。
 壊れなければ安全だというのであれば、「原発」も一緒ですよね。
 安全と安心は違います。がれき焼却がもし”安全”であるにせよ、国が安全性について十分な検討もせず瓦礫焼却をスタートさせた以上、国民が”安心”できないのも当然なのかな、と思います。
 
 私は放射性セシウムと安定セシウムの挙動は同じだろうと考えています。
 なので、icchouさんの記事については「確かに納得できる部分はある」と書きました。引用した新聞記事はミスリードになりそうなので、一部削除します。
 ご指摘ありがとうございました。

[ 2012/01/27 15:55 ] [ 編集 ]
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