ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

牛乳の放射能汚染は深刻か?

[ 2011/10/12 (水) ]
 サイト「WEDGE Infinity(ウェッジ・インフィニティ)」の10/12のエントリー 牛乳の放射能汚染は深刻か チェルノブイリと飼育法異なる 「福島のコメは危ない」も短絡的 松永和紀

 原文は、米と牛乳の汚染について論じていますが、米の汚染関連は別エントリーにします。
 原意を損なわない範囲でキーワードを太字にしています。

【牛乳の汚染関連を全文引用】

 放射能には詳しくとも、生産現場の状況に関する知識に乏しい人がばらまく “恐怖情報”が、世間の不安を煽り風評被害を産んでいるようにも見えます。放射線の影響をあなどってはなりませんが、事実でないことに基づいて怖がるのは意味がありません。主要食品の現状と今後を2回にわたって考えます。

チェルノブイリとの比較は、意味がない

 食品の中で、もっとも誤解されたのは牛乳かもしれません。チェルノブイリ原子力発電所事故では、放射性ヨウ素に汚染された牛乳を子どもたちが飲み続けたのが原因で、甲状腺がんの発症率が大きく増加しました。事故で放射性ヨウ素が放出され降下して牧草が汚染され、それを牛が食べて牛乳に濃縮されてしまったのです。事故時に18歳以下であった子どもたちから事故後に5000例近くの甲状腺がんが見つかっています。そのため、福島原発事故後も、「牛乳が危ない」という情報が週刊誌などでたびたび報じられてきました。しかし、それは日本の牛乳生産、つまり「酪農」の実態を知らない故の誤報です。
 まず、日本の酪農は旧ソ連とはまったく違い、ほとんどの場合、牛に屋外の牧草を食ませるような飼育はしておらず、牛舎で飼っています。穀物など栄養たっぷりの「濃厚飼料」と稲わらや牧草など繊維質が中心の「粗飼料」の両方を与えますが、濃厚飼料の約9割は輸入。そして、酪農家の粗飼料自給率は、北海道は53%と高いものの、都府県は17%(農水省2009年調査)。しかも、多くは牧草を春から秋にかけて栽培し刈り取って保管し、牛舎で少しずつ食べさせるやり方です。
 福島原発事故後、農水省も農業関係者もまず、心配したのが牛乳でした。しかし、福島県内では地震災害により乳業工場は操業が停まり、各酪農家からトラックで原乳を集めることも不可能となりました。地震直後から福島産牛乳の出荷はストップしたのです。
 同県内の酪農家には、「降下した放射性物質が付いた飼料は食べさせないように」という情報が伝えられました。3月16日から原乳の検査が始まりましたが、この時点での放射性ヨウ素の数値は非常に高くなっています。しかし、これらの原乳は出荷されていません
 そして、飼料の管理が進み数値の推移が確認され、暫定規制値を大きく下回る数値が続くことが確認されたうえで、4月8日にまず、同県会津地方で出荷制限が解かれ、乳業工場が再稼働しました。会津地方は、放射性物質の降下量が比較的少なく空間線量が低い地域です。
 その後、他地域でも、同様に数値の動向をみて数値が低いことが確認されたうえで出荷制限が解かれて、順次乳業工場は再稼働しています。
 つまり、もっとも懸念された時期には、福島の牛乳は市民の口には入っていないのです。
牛乳のヨウ素  牛乳のセシウム
福島の牛乳の放射性ヨウ素       福島の牛乳の放射性セシウム

「人工的」な牛舎内飼育のおかげで放射性物質汚染を免れた

 では、周辺他県は? 茨城県が興味深い検査結果を出しています。同県は、東海村を抱えているために、放射性物質を精密に測れる分析機器を備え、他県よりも早く検査を始めました。3月19日~22日の原乳検査を見ると、牛舎内で飼育されていた牛の原乳は放射性ヨウ素、セシウム共に低い一方、放牧の原乳の結果は暫定規制値を上回る結果でした。放牧の牛は屋外の草を食んでいたのでしょう。
 報告を受けて厚労省、茨城県は3月23日、慌てて同県の牛乳の出荷制限に踏み切りました。放牧の生産者はごくわずかですが、牛舎内飼育か放牧かを問わず出荷をストップさせるという、非常に安全側に立った対策をとったのです。
 これまで、放牧せず牛舎内で飼育し輸入飼料に依存する日本の酪農はとかく、「人工的だ」などと農業経済学者や有機農家などの批判を浴びて来ました。ところが皮肉なことにこの方式だったので、牛乳の多くは放射性物質汚染を免れました
 牛乳は、福島と茨城両県以外では出荷制限がかかりませんでした。周辺各県はこの時期、福島、茨城両県のように原乳の検査をひんぱんに行っていたわけではなく、行政対応としては非常に大きな問題がありました。しかし、周辺各県も放牧はごく少なく輸入飼料に依存しているのは同じなので、放射性物質に高く汚染された牛乳が連日、消費者に提供される事態は避けられたとみられます
 検査の結果を見ても、福島県産の放射性ヨウ素は当初高く、次第に下がったことが分かります。現在は、半減期の短い放射性ヨウ素は当然、検出されませんし、放射性セシウムも不検出(検出限界未満)か非常に低い数値です。
 以上のことから、チェルノブイリの事例を引いて「牛乳が危ない」としてはいけないのは明白です。ところが、未だにこうした発言をする識者や雑誌、書籍などが後を絶たないのです。

「汚染牛乳を混ぜて薄めている」は見解の相違 「まとめて測定」により、数値を確認のうえで飲めた

 原乳については、検査の方式に大きな不信が持たれています。
 原乳は一般に、各農家から乳業工場に直接運ばれるのではなく、各農家の原乳をタンクローリーで集めて「クーラーステーション」と呼ばれる冷蔵保管施設に移し、それからまとめて乳業工場に運ばれます。原乳が乳業工場で加熱殺菌されて牛乳になります。
 検査は、主にクーラーステーション、または乳業工場でサンプリングされて行われました。そのため、一部のメディアなどが「汚染された原乳が運ばれ、混ぜられ薄められている」などと報じたのです。
 たしかに、酪農家1戸ごとの検査結果は、この方式では分かりません。汚染された稲わらを食べさせた牛肉農家と同じように、汚染飼料を牛に食べさせていた酪農家が、当初はいたかもしれません。しかし、前々回で書いた通り、食品中の放射性物質を正確に測定できる分析装置の数は少なく、何でもふんだんに検査できる環境ではありません。効率よく検査を行い、食品の安全性を守る必要があります。そして、クーラーステーションや乳業工場でまとめてはかるからこそ、原乳は全戸検査に近い形で数値を確認することができ、暫定規制値を大きく下回ったり検出限界未満であることを分かったうえで飲むことができる、とも言えるのです。
 牛乳の価格についても考えてみてください。今や、水よりも安いのが牛乳です。たしかに、原乳生産量の非常に多い北海道から本州へまとめて牛乳を運ぶなど、原乳を移動させるケースはありますが、大型タンクローリーで効率よく運ばないと採算がとれません。
 原乳を調べて汚染されていたら他県に移動させて薄める、というような「こまめな作業」に見合うほど、牛乳は高くないのです。それに、汚染原乳をわざわざ、自分たちの原乳に混ぜてリスクを負うクーラーステーション、乳業工場が今時、あるでしょうか? 農業のシビアな経済原理を無視して、“混ぜられた可能性”を云々するのは無責任です。

牛乳を避けて豆乳 別のリスクが大きくなる?

 先日、子どもに牛乳の代わりに輸入豆乳を飲ませているというお母さんの姿が、テレビ番組で紹介され、私は心配になりました。なぜならば、豆乳に多い大豆イソフラボンについては、摂り過ぎによる健康影響を懸念する報告があるからです。
 食品安全委員会は一般的な成人の1日摂取目安量の上限70~75mgとしています。大豆イソフラボンはその化学構造が女性ホルモンと似ているため、体内で似た作用を及ぼす可能性があり、同委員会は乳幼児や小児については、日常的な食生活(豆腐や納豆などを普通量、食べる生活)に上乗せして摂取することは推奨できない、としています。
 豆乳の大豆イソフラボン含有量は、市販品で100g中20mg程度。子どもが牛乳代わりに飲んでよい、とは私には思えません
 放射線のリスクを心配して特別な食生活をしていると、思いがけない別のリスクを被る可能性があり、「トレードオフ」が起こりえます。やはり、間違った情報に振り回されるのは問題が大き過ぎます。検査結果はウェブサイト上で公表されていますので、その推移を自分で確認して、冷静に判断してほしいのです。
 後篇では、水産物やキノコ等、ほかの食品について、検討します。

(ブログ主注)
 チェルノブイリで多くの子供たちが大量被ばくしてしまった状況については、以下のエントリーを参照ください。

 ●航空機モニタリング結果(汚染マップ)でのチェルノブイリ汚染区域(ゾーン)との比較

【つぶやき】
 個人的に、的確・科学的で良い情報だと思いました。
 どちらを信用するか?は個人の自由であるが、“煽り系の情報”に対して、“冷静系の情報”も存在する。慌てる必要がないので、よく吟味して行動したい。
 そもそも、政府への不安・不満・不信のせいで、個人が情報を集めなければならない実態を作ってしまった事が問題ではあるが・・・


【関連エントリー】
●福島のコメ・米の汚染情報、時系列まとめ
[ 2011/10/12(水) ] カテゴリ: 今では古い陳腐化情報 | CM(0)
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