ポストさんてん日記

放射線・エネルギー・環境・化学物質・食品などの情報をアーカイブとして整理すると同時に、徒然につぶやいています。 リンクはご自由に。

【風評被害01】科学的根拠で判断を 原発の風評被害

[ 2011/09/27 (火) ]
 タイトルは東京新聞9/25の記事の見出しですが、良い記事だと思いました。産経の記事との比較、風評被害についての勉強など、まとめてみました。

1.東京新聞 「核心」 9/25 科学的根拠で判断を 原発の風評被害

 福島第一原発事故は、人や物への直接被害にとどまらず、農水産物や観光業など幅広い風評被害をもたらしている。愛知県日進市では18日、市民の抗議を理由に、福島県産の花火の打ち上げを取りやめる事態が起きた。
 1954年の「第五福竜丸」事件から見られるようになったとされる風評被害。どう受け止めればいいか。(豊田雄二郎、中崎裕、坪井千隼)
■迷い
 「あの段階で中止した判断が正しかったのか否か、いまだ分からない」。22日、謝罪のため福島県を訪れた日進市の萩野幸三市長は、報道陣にそう漏らした。花火打ち上げを中止した対応の非は認めた。しかし、花火に放射性物質が含まれていたのか、安全性は確かめられていない。市長自身、迷いが吹っ切れないでいる。
 順序は逆になったが、市は21日、検査会社に花火の容器や火薬について放射性セシウム、ヨウ素の測定を依頼。今週中に出る結果次第で、来年の大会で福島産花火の打ち上げを検討する。
 「問題は放射性物質の有無ではなく、多いか少ないか」。国際放射線防護委員会(ICRP)の委員を務める甲斐倫明・大分県立看護科学大教授(放射線リスク)は指摘する。「花火から何らかの数値が出たとしても、打ち上げて拡散するのはごく微量。健康被害は考えられない。イメージだけで取りやめたのでは、風評被害につながる」と話す。
■影響
 風評被害の問題に詳しい関谷直也・東洋大准教授(社会心理学)は、54年にビキニ環礁で米軍の水爆実験に遭った第五福竜丸事件が風評被害の始まりと指摘する。放射能パニックが起き、マグロを中心に魚が売れなくなった。
 その後に起きた原子力船「むつ」や、敦賀原発の放射能漏れ事故でも、放射性物質による大きな汚染はないとされたが、ホタテガイなどの売れ行きに影響が出た。
 「過去の事故は、調べれば汚染の有無が明確だった。風評被害は科学的な根拠があるかないかに尽きる。安全ではない根拠があれば風評被害ではない」と指摘する。
■限界
 福島第一原発の事故後、政府は食品などに暫定規制値を設けた。コメや野菜は1kg当たり500ベクレル。事故直後、各地でホウレンソウなどの出荷自粛が相次いだが「現在は価格も安定し、野菜の風評被害は感じられない」(JA全農みやぎ)という。
 一方、23日に初めて福島県二本松市産か規制値並みの放射性セシウムが検出されたコメの今後は不透明だ。
 さらに被災地に山積するがれき。環境省のガイドラインでは、焼却処分後、灰が1kg当たり8000ベクレル以下なら埋め立て可能。しかし、「いくら低くても数値が出れば、市民感情に配慮し受け入れられない」という自治体は多く、処分は進んでいない。
 基準を設け、いくらクリアしていても、残る不安感。今回の花火には、その基準もない。だからといって「ありとあらゆるものに基準を作るのは困難」(甲斐教授)だ。
 風評被害は今後も広がるのか。関谷准教授は、放射性物質が広範囲に広がった事実を挙げ「これからの現実社会を生きるには、過剰に『ゼロ』を追求するのではなく、科学的な根拠を背景に、合理的な折り合いを付けることが必要」と話す。
 福島産花火の打ち上げ中止問題 愛知県日進市や地元商工会の実行委が18日夜開いた花火大会で、計2000発中、復興祈願のため打ち上げる予定だった福島産の80発を、直前に愛知産に切り替えた。大会前に「放射能で汚染された花火を持ち込むな」「安全と言い切れるのか」など20件の苦情が寄せられたため。19日以降は「福島の人を傷つけた」「風評被害を広げた」など3500件の意見が殺到。ほぼすべてが中止への抗議だった。


 愛知県日進市の花火大会で、川俣町製の花火の打ち上げが中止された問題は、目に見えない放射能への不安を打ち消すことの難しさを改めて知らしめた。
 22日、川俣町を訪れた日進市の萩野幸三市長は、声をつまらせながら「心よりおわびしたい」と古川道郎町長と花火を製造した菅野煙火店、菅野忠夫代表に謝罪した。会談後、インタビューで中止を判断した是非を繰り返し問われた萩野市長は、何度も答えに詰まり、最後に「正しい判断でなかった。放射能の問題をしっかり整理し、客観性をもって判断すべきだった」と対応の甘さを認めた。
 ただ、市長は「正直何が正しかったのかいまだに分からない」とも述べ、「市民の不安」と「被災地の思い」の板ばさみで苦しい選択を迫られたつらさを漏らした。
 花火大会は、市民有志や商工会でつくる実行委員会が主催し、市の権限で対応できない部分も多かったようだ。会談で古川町長は「町には計画的避難区域の山木屋地区もあるが、菅野さんの工場はまったく別の場所だ。花火は昨年に製造されており工場の管理もしっかりしていた」と説明。さらに、作業場の空間線量率が最高でも毎時0.45マイクロシーベルトにすぎず、花火表面の放射線量も微量だったデータを示して理解を求めた。
 県内ではこうした放射線への知識はかなり定着している。しかし、愛知県では行政当局でも、安全性の判断ができず、結局、一部市民の強い声に押し流されたようだ。市長は新たな風評被害を招いた責任を認め、町側が求めた市民への啓発などに努力する考えも示している。また「謝罪を寛容に受け入れてくれた町長や菅野さんに感動した。市のイベントで川俣の名産品を積極的に販売したい」と交流への意欲を訴えた。
 だが、正しい理解を深め、しっかりした判断基準を持たなければ、同じ過ちを繰り返すおそれもある。復興支援に水を差さないためにも、全国の行政トップは放射線について学び、福島側も安全性を丁寧に説明する努力が求められる。(中川真)

つぶやき

●東京新聞記事の良いところ
 今回の出来事を風評被害の問題と、明確に捉えている。
 なぜ、風評被害なのか?専門家(甲斐教授)の意見を載せている。
 風評被害についての専門家(関谷准教授)の意見を載せている。
●産経新聞記事の悪いところ
 最後の一文につきる。
 “全国の行政トップは放射線について学び”→理系の職員もいるでしょう。いまさら“行政組織として学び”が足りないとしたら、怠慢以外のなにものでもないと思う。さらに今、“行政トップに必要な学び”は、“風評被害についての学び”ではないでしょうか?
 “福島側も安全性を丁寧に説明する努力”→風評被害が問題なのだから、これはピント外れのトンチンカン。


3.ブログ「taroyan155の日記」9/24のエントリー 風評被害 そのメカニズムを考える 関谷直也著 がタイムリーで勉強になりました。

 偶然にも、著者の関谷直也さんは、東京新聞記事のコメンテーターです。

【“なるほど”と思ったごく一部を引用】(的外れかもしれない一部引用より、原文をお読み頂いた方が良いかと。簡潔にまとめられていますので)
●風評被害の定義
 ある社会問題(事件・事故・環境汚染・災害・不況)が報道されることによって、本来「安全」とされるもの(食品・商品・土地・企業)を人々が危険視し、消費、観光、取引をやめることなどによって引き起こされる経済的被害のこと。
 絶対的な「安全」を求める心理と圧倒的な報道量を原因とする消費行動に伴う「経済的被害」を指す。
●発生のメカニズム
 キーワードがすでに触れているように、「安全」「報道(量)」「経済的被害」の3つである。
 風評被害となりえるのは、人々が「安全」を強く求めているという社会があり、現時点では「安全」は担保されている「安全社会」であることが前提となる。その「安全」を脅かす事件・事故などが広くマスメディアを通じ多くの報道がなされることで、人々の関心が高まり、それらを重要な出来事と認知されることで、風評被害が発生する条件がそろう。
●風評被害の対策
 いくら科学的なリテラシーが広く社会に備わったとしても、風評被害を抑える対策とはならないと著者は指摘している。
 まずは「風評被害」のことを正しく知ることである。そして、問題となっている食品や商品について、「安全なのに風評被害を受けている」と分かっているならば、不安でも、あえてその食品や商品を買うくらいのことをする。「うわさは智者で止まる」という。周囲の感情に流されず智者となる。それには、本書で縷縷(るる)と述べてきた、風評被害のメカニズムを知ることが大事である。

つぶやき

 風評被害の問題については、もう少し勉強してみたい思うので、タイトルに連番をふりました。


関連エントリー(新しい順)

●【追伸】風評被害の概念から外れる食品放射線汚染問題をどう考えるか?
●【風評被害03】関谷直也准教授の解説(後編)
●【風評被害02】関谷直也准教授の解説(前篇)
●【風評被害01】科学的根拠で判断を 原発の風評被害 ←本エントリーです

【個人的メモ】
●「あいんしゅたいん」宇野賀津子氏 ビキニ環礁核実験:第五福竜丸被曝事件
[ 2011/09/27(火) ] カテゴリ: ゼロリスク,デマ,風評,不信専門家 | CM(0)
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