ポストさんてん日記

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IAEAに追加報告した“28の教訓”への対応、取り組み姿勢の後退も?

[ 2011/09/14 (水) ]
 9月11日、政府はIAEAへの2回目の報告書をまとめた。

【経緯】
 6月7日 政府の原子力災害対策本部が、福島原発事故の報告書をまとめ、国際原子力機関(IAEA)に報告した。 当ブログでは『28項目の事故の教訓』に注目した。(既エントリー

 その時点で、大きな問題点が三つあった。
1.この報告書自体の確からしさ、の検証が必要である。本来は「事故調査・検証委員会」できちんと原因を分析しないと“教訓”など出てこない筈のものだ。
2.事故原因を「地震による大きな損壊は確認されていない」としている為、耐震性・耐震基準に関する項目がない。ほんとにそうか?
3.設置から40年以上経過した原子炉本体の老朽化、設計の古さに関する項目がない。

【今回の内容について】
 今回の2回目の報告のⅥ.教訓(28項目)への取組みを見ると、上記の問題点を残したまま対応を進めている結果として、“本質から外れた単なる応急対策の中間報告”としか見ることができないレベルのものだ。 下記リストでそれが良く判る。 IAEAの総会で説明するとの事だが、恥ずかしい内容だと思う。 “教訓”などではなく“応急対策です”とはっきり言った方が良い。

 “項目”と“内容”の下の幅広スペースへの記載が、“今回の報告内容”すなわち“対応状況”である。“内容”の部分は初回報告の抜粋であるが、“今回の報告内容”でズレが生じている部分もあり、取り組み姿勢の後退も感じる。(下の方に記述)
【教訓 1】 シビアアクシデント防止策の強化
項目内容
1地震・津波への対策の強化 地震想定は複数震源の連動を考慮し、外部電源の耐震性を強化する。
 津波のリスクを認識し、安全機能を維持できる対策を講じる。
●計画中→原子力安全委員会は、地震と津波に関する指針類の見直しに着手。原子力安全・保安院は、十分な再来周期を考慮した津波の発生頻度と十分な高さを想定する設計基準や津波のもつ破壊力を考慮した構造物等の安全設計基準等について検討を開始。←納期は?既設への波及は?
2電源の確保 多様な非常用電源の整備、電源車の配備など電源の多様化を図り、緊急時も長時間にわたって電源を確保できるようにする。
●実施済→電源車の配備、非常用ディーゼル発電機の電源容量確保(他号機からの非常用電源の融通)、重要機器の設置場所の浸水対策(貫通部等や扉のシール化等)、電力系統の信頼度の評価など
●実行中→ 大型空冷式非常用発電機非常用空冷式ガスタービン発電機の設置、供給信頼性向上対策(送電線の補強等)、開閉所等の津波対策、送電鉄塔の倒壊対策、開閉所設備の耐震性強化
●計画中→ 蓄電池の大容量化や非常用電源の燃料タンクの耐震性強化
3原子炉及び格納容器の冷却機能の確保 代替注水機能や水源の多様化などにより、確実な代替冷却機能を確保する。
●実施済→代替・外部注水資機材(ポンプ車・消防車・ホース・接続部品等)の配備、淡水タンクの容量確認、海水を水源とする給水方法の整備
●実行中→海水系冷却ポンプ・電動機の予備品、仮設ポンプの確保や海水系冷却系を駆動できる大型空冷式非常用発電機等の設置
●計画中→大規模淡水タンク等の耐震強化
4使用済み核燃料プールの冷却機能の確保 電源喪失時も維持できる代替冷却機能を導入する。
●実施済→冷却水の給水を行う代替・外部注水資機材(消防車・ホース・接続部品等)の配備、淡水タンクの容量確保、海水を水源とする給水方法の整備
●計画中→使用済燃料プールの冷却系配管の耐震強化
5アクシデントマネジメント(過酷事故へ拡大させない対策)の徹底 国の指針も92年の策定以来、見直されていない。事業者による自主保安の取り組みを改め、法規制上の要求にする。
6複数炉立地における課題への対応 一つの発電所に炉が複数ある場合、各炉の操作を独立してできるようにし、影響が隣接炉に及ばないようにする。
●実施済→号機毎に独立した責任体制、事故対応体制、手順の整備
●計画中→複数炉立地における各原子炉の工学的な独立性をより確実なものにするための方策を検討←抽象的
7原発施設の配置の基本設計上の考慮 使用済み核燃料プールが原子炉建屋の高い位置にあった。今後は冷却を確実に実施でき、事故の影響の拡大を防ぐ配置を進める。
 既存の施設は、同等の機能を有するための追加的な対策を講じる。
●計画中→原子炉新設等における基本設計においては、原子力発電所の施設や建屋の適切な配置等に十分に配慮することを求めることとして、その検討の具体化
8重要機器施設の水密性(水の浸入防止)の確保 設計の想定を超える津波・洪水の場合も、水密扉の設置などで水密性を確保する。
●実施済→原子炉建屋における重要機器の設置場所の浸水対策(貫通部や扉のシール化等)
●実行中→原子炉建屋の水密化や水密扉の設置


【教訓 2】 シビアアクシデント対応策の強化
項目内容
9水素爆発防止対策の強化 水素を的確に逃がすか減らすため、格納容器の健全性を維持する対策に加え、水素を外に逃がす設備を整備する。
【沸騰水型軽水炉(BWR)】
●実施済→建屋屋上に穴あけによる排気口を設けることとし、既にその作業ができる体制を整えた
●計画中→原子炉建屋の頂部に水素ベント装置を設置、原子炉建屋内に水素検知器を設置
【加圧水型軽水炉(PWR)】
●実施済→既に整備されているアニュラス排気設備によって水素を確実に外部へ放出できることの確認
●計画中→電源を用いない静的触媒式水素再結合装置等の格納容器内の水素濃度を低減させる装置を設置
10格納容器ベントシステムの強化 効果的にベントを活用できなかった。今後は、操作性の向上や独立性の確保、放射性物質除去機能などを強化する。
●実施済→交流電源喪失時においてもベントラインの弁操作を可能とする空気弁用アキュムレーター予備機可搬コンプレッサーの設置
●計画中→格納容器ベントシステムの強化←抽象的
11事故対応環境の強化 中央制御室や原発緊急時対策所の放射線量が高くなり、事故対応に支障が出た。放射線遮蔽(しゃへい)の強化など、活動が継続できる環境を強化する。
●実施済→構内通信手段の確保(構内PHS通信設備の電源供給トランシーバー)、可搬式照明装置の確保、中央制御室の作業環境の確保(電源車による換気空調系設備への電力供給)
●実行中→構内PHS装置等の高所への移設
●計画中→緊急時対策室の機能強化や事務棟の耐震強化
12事故時の放射線被ばくの管理体制の強化 事故時の防護用資材を十分に備え、被ばく測定を迅速にできるようにする。
●実施済→高線量防護服の発電所への配備、高線量防護服、個人線量計、全面マスクなどの事業者間での相互融通、緊急時に放射線管理要員が放射線管理上の重要な業務に専念できる体制の構築、緊急時の放射線管理に関する社員教育の充実
13シビアアクシデント(過酷事故)対応の訓練の強化 訓練を強化する。
14原子炉及び格納容器などの計装系(測定計器類)の強化 過酷事故発生時も十分機能する計装系を強化する。
●計画中→シビアアクシデント発生時にも十分機能する原子炉・格納容器計装系、使用済燃料プール計装系等の開発・整備←抽象的
15緊急対応用資機材の集中管理とレスキュー部隊の整備 過酷な環境下でも円滑に支援できるよう資機材の集中管理や部隊の整備を進める。
●実施済→緊急時対応資機材(電源車、ポンプ車)の整備・管理、運用する実施部隊の整備、瓦礫処理のための重機や高放射線量下での作業を防護するマスク防護服等の整備とそれらの事業者間での共有化、相互融通の体制構築
●計画中→ロボット、無人ヘリ、重機、除染機材、事故進展予測システム等の緊急時対応用の資機材等の整備や自衛隊、警察、消防、海上保安庁等の訓練を通しての能力向上等を図ること


【教訓 3】 原子力災害への対応強化
項目内容
16大規模な自然災害と原子力事故との複合事態への対応 事故が長期化する事態を想定、各種分野の人員の実効的な動員計画を策定する。
17環境モニタリングの強化 緊急時の環境モニタリングは地方自治体の役割としているが、緊急時は国が責任をもって実施する。
18中央と現地の関係機関の役割の明確化 当初は政府と東電、東電本店と原子力発電所、政府内部の役割分担の責任と権限が不明確だった。責任関係や役割分担を見直し、明確化する。
19事故に関するコミュニケーションの強化 各国の支援申し出を国内のニーズに結びつける政府の体制が整っておらず情報提供も不十分だった。情報共有体制を強化する。
20各国からの支援への対応や国際社会への情報提供の強化 情報共有体制を強化する。
21放射性物質放出の影響の的確な把握・予測 SPEEDIの計算結果は当初段階から公開すべきだった。今後は、事故時の放出源情報が確実に得られる計測設備を強化し、当初から公開する。
●実施済→略 (意味のない内容が書いてある
●計画中→新しい安全規制組織がSPEEDIの運用を含めた環境モニタリングの司令塔機能を担うことになっており、それも踏まえてSPEEDIのより効果的な活用のあり方について見直しを進めていく←抽象的
22原子力災害時の広域避難や放射線防護基準の明確化 退避期間は長期化した。事故で設定した防護区域の範囲も防護対策を充実すべき範囲を上回った。このため、原子力災害時の避難の範囲や防護基準の指針を明確化する。


【教訓 4】 安全確保の基盤強化 、安全文化の徹底
項目内容
23安全規制行政体制の強化 原子力安全・保安院を経済産業省から独立させ、原子力安全委員会や各省も含め規制行政や環境モニタリングの体制を見直す。
24法体系や基準・指針類の整備・強化 既存施設の高経年化対策のあり方を再評価し、法体系や基準の見直しを進める。
当初報告にあったキーワード“既存施設の高経年化対策”がなくなっている。下記の別記比較を参照
25原子力安全や原子力防災に関わる人材の確保 今回のような事故では、過酷事故への対応や放射線医療などの専門家が結集し取り組むことが必要。教育機関や事業者、規制機関で人材育成活動を強化する。
26安全系の独立性と多様性の確保 これまで(安全確保のシステムである)安全系の多重性は追求されてきたが、独立性や多様性を強化する。
●計画中→非常用発電機や海水冷却系の種類や設置場所等において独立性や多様性を確保することなど、共通原因多重故障への的確な対応と安全機能の一層の信頼性向上を図るとともに、安全系の独立性や多様性の確保を強化←抽象的
27リスク管理における確率論的安全評価手法(PSA)の効果的利用 リスク低減の取り組みを検討するうえで、(リスク発生の確率を評価する)PSAは効果的に活用されてこなかった。PSAを積極的に活用し、効果的な安全向上策を構築する。
28安全文化の徹底 原子力安全に携わる者が専門的知識の学習を怠らず、吟味を重ねる姿勢を持つことで、安全文化を徹底する。


 ●教訓第24項「法体系や基準・指針類の整備・強化」の初回報告と2回目報告の比較
 当初報告にあったキーワード“既存施設の高経年化対策”がなくなっている。
教訓第24項「法体系や基準・指針類の整備・強化
初回報告(6月7日)2回目報告(9月11日)
今回の事故を踏まえて、原子力安全や原子力防災の法体系やそれらに関係する基準・指針類の整備について様々な課題が出てきている。また、今回の事故の経験を踏まえ、IAEAの基準・指針に反映すべきことも多く出てくると見込まれる。
このため、原子力安全や原子力防災に係る法体系と関係する基準・指針類の見直し・整備を進める。その際、構造信頼性の観点のみならず、システム概念の進歩を含む新しい知見に対応する観点から、既存施設の高経年化対策のあり方について再評価する。
さらに、既に許認可済みの施設に対する新法令や新知見に基づく技術的な要求、すなわち、バックフィット法規制上の位置づけを明確にする。
このため、事故から得られた知見を基に、新たな安全規制の仕組みの導入(バックフィット等)、安全基準の強化、複雑な原子力安全規制法体系の整理を含め、原子力安全や原子力防災の法体系・基準等の見直しを進める計画である。
また、今回の事故の解析に基づき、原子炉の基本設計等に関する詳細な評価や、炉型と事故要因との関係の検証を行うとともに、原子炉設計の技術進歩を踏まえ、最新の技術と比較しつつ、既設炉の安全性・信頼性に関する評価進めていく計画である。
併せて、関係するデータを提供することなどにより、IAEAの基準・指針の強化のため最大限貢献をする。また、今回の事故から得られた我が国の経験・知見を、IAEAの基準・指針の検討に積極的に提供していくこととしている


【つぶやき】

●たまたま瑣末かも知れない事に気が付いてしまったが、“取り組み姿勢の後退”も表している思う。
●まあ、これが官僚の作文の世界なんだろうけど。


【関連エントリー】
●IAEAに提出した政府報告書の28の教訓

【個人的メモ】
●「Business Media 誠」2012/6/19 民間事故調シンポジウム:なぜ原発の安全神話は生まれたのか (1-3)
[ 2011/09/14(水) ] カテゴリ: 原発に直接に関する事 | CM(0)
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