
●100mSvの放射線の発ガンリスクはタバコの発ガンリスクの20分の1程度であり、0.5歳の加齢つまり6ヶ月だけ年を取ることによる発ガンリスクの上昇よりも小さい値です。これは「明らかな健康障害」とはとても言えないでしょう。
●医学的に意義のある発ガンリスクは、少なくともタバコの10分の1以上の発ガンリスクつまり200mSv以上の放射線を浴びた場合であり、
●「明らかな健康被害」と言えるのは、タバコの半分程度の発ガンリスクである1Sv以上の放射線を浴びた場合ではないかと思います。
放射線が健康に与える影響について書かれた資料を科学的に正確に解釈するには、統計学的知識と医学的専門知識の両方を兼ね備えていなければなりません。 僕がこれまでに読ませていただいたウェブサイト等の資料のうち、医学分野以外の分野――例えば工学、物理学、化学等――の専門家が書かれた放射線の健康被害に関する説明は、残念ながら統計学的に正確とは言いかねるものが少なからずありました。 専門家は専門分野のことを正確に理解する難しさをよくわかっているだけに、専門外の分野のことは最も安全側に立って解釈することが多く(もちろん、これは科学者として当然の態度です)、ややもすると放射線が健康に与える影響を過大評価しがちな傾向があるように思います。
放射線の健康被害について考える時は、胸のX線写真1回分の放射線量や飛行機で東京−ニューヨーク1往復分の放射線量を目安にするのではなく、「1Sv(=1000mSv)の放射線の発ガンリスクは、タバコの発ガンリスクの半分程度」ということを目安にする方が良いと思います。
寺田寅彦の有名な言葉に、
“ものを怖がらなすぎたり、怖がりすぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなかむつかしい” (『小爆発二件』1935年11月、文学)
というものがあります。
放射線はまさに「正当に怖がること」が非常に難しいシロモノです。 例えば50mSv程度の放射線被曝を恐れて喫煙者がいる避難場所に避難すると、かえって発ガンのリスクを上げてしまうことになりますし、1mSv程度の内部被曝を恐れて野菜を食べないでいると、やはりかえって発ガンのリスクを上げてしまうことになります。 また甲状腺被曝を恐れて毒性の強いヨードチンキを飲んで副作用が発現したり、飲料水を飲まずに脱水症状になったりと、不正確な情報や偏った情報に煽られて闇雲に行動すると、かえってリスクを上げてしまう結果になってしまいます。
放射線を正当に怖がり、正しい対処法を考えるためには、放射線に対する正確な科学的知識を持ち、健康被害に関する幅広く正確な情報をできるだけ沢山手に入れることが大切です。 我々の周囲には放射線だけでなく多くのリスクが存在します。 全体的なリスクを減らすためには、それらのリスクの大きさと相互の関連性をできるだけ正確に見極め、どのリスクを減らせば全体的なリスクが最も効果的に減るかをよく考えて、冷静に行動する必要があります。
≪ LNT仮説に関する典型的な間違い記事 | Home | 再生可能エネルギーに頼れない理由 ≫

管理人:icchou
元,理系会社員
元,不まじめな賛成派
ポスト3.11で?