ポストさんてん日記

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脳と感覚:味覚、「おいしい」と感じる脳

[ 2020/05/11 (月) ]
前回の嗅覚に続いて、脳の勉強ノート、第7弾です。
解剖学的には味覚と嗅覚はそれぞれ独立した感覚であることなどが理解できました。
また“舌の味覚地図”など、古い間違った理解も訂正されました。

目次

1.5つの基本味
2.味を検知するセンサー、味蕾みらい
3.味覚を伝える3つの神経系
4.昧情報の複雑なネットワーク
5.味覚障害
6.主な参考文献

1.5つの基本味

味は、甘味、塩味、苦味、酸味、うま味の5種類。ここに辛味が含まれていないのは、「幸い」と感じるのは味覚ではなく、口の中の痛みの感覚だから。
5つの基本味のうち、最後に加わったのは、20世紀初頭に池田菊苗氏によって発見された「うま味」。近年は味覚の研究が進み、このほかにも脂肪やカルシウムなど、いくつかの基本味があると考えられているが、まだ解明には至っていない。
5つの基本味

2.味を検知するセンサー、味蕾みらい

味覚は食料と毒を区別するのに大切な感覚として進化してきた。
味覚を検知するセンサーは味蕾みらいと呼ばれ、大部分は舌の乳頭にゅうとうに分布している。(上あごや喉などにもある。)
乳頭の形や味蕾の数は場所によって異なる。
  • 付け根(舌根)付近に10個程度の乳頭があり、1個の突起あたり数百~千個の味蕾が存在。
  • 付け根に近い部分のふち(舌縁)の乳頭には1個の突起あたり十数個の味蕾が存在。
  • 舌の前の乳頭には1~5個の味蕾が存在。
  • 味蕾をもたない乳頭だが)舌上面の全体に白いポツポツとして見える突起は、基本的な味の感知には関係しない。
味蕾の総数は1人あたり2000~5000個といわれるが、実際には、500個の例も2万個の例もあり、個人差が大きい。
乳頭と味蕾
出典:味覚と舌苔について(グリコ 健康科学研究所)

以前は、上記の舌の部位ごとに担当する味の種類が分担されている、との説明や「味覚地図」といった表現が広まり信じられてきたが、現在では間違っていたことが判明している。(1つの味蕾で5味を感知、次項参照。)

3.味覚を伝える3つの神経系

食べ物を噛むと、味の成分が唾液に溶け出し、舌にある味蕾がこれをとらえる。
味蕾の中には約100個の味細胞(味覚受容細胞)が並び、味の刺激を電気信号に変換する。このとき、それぞれの味細胞は、5つの基本味のうち特定の味反応する。
味細胞上端には特定の味成分と結合するタンパク質(味覚受容体)が存在し、例えば甘味受容体を持つ味細胞は、苦味・旨味・酸味など、他の味に対する受容体を持たない。
味覚受容細胞

味の信号は延髄の孤束核こそくかくに伝わる。
孤束核は脳幹の延髄に存在する神経核
神経核とは
組織の中に神経細胞体部分(灰白質のかたまり)があちこちに散在している。これらの島状にあるいは塊状に点在する灰白質を神経核と呼ぶ。

味蕾から孤束核まで
出典:味覚器~舌と味蕾と味細胞(百珈苑)

それぞれの味神経が属している神経系は味蕾のある部位によって異なる。
  • 舌の前方2/3の感覚は舌神経から鼓索神経(顔面神経の枝)顔面神経を通り孤束核に入る。
  • 後ろ1/3は舌咽神経を経由して孤束核に入る。
  • 喉頭蓋と喉頭蓋谷からの味覚は迷走神経を経由して孤束核に入る。
このうち味覚の感知には、舌咽神経がもっとも大きな役割を担っていると言われており、味蕾の数の多さと合わせて、舌後〜舌奥にかけての領域がもっとも「味に敏感な」部分だといえる。

以下は、既エントリー脳の全体構造、主要な部位から転記
脳神経 (部位としては脳幹)
脳神経とは、神経系の中で、脳に出入りする末梢神経のこと。一方で、脊髄に出入りする末梢神経脊髄神経と呼ぶ。
それぞれ左右1本づつ12対ある。これらの神経のうち、嗅神経と視神経以外の10対は脳幹から出ており、さまざまな感覚や運動を支配している。
脳神経

起部位名称働き
1 嗅神経嗅覚。
2 視神経視覚、瞳孔調節。
中脳3 動眼神経目を動かす筋肉と瞳孔の収縮など。
4 滑車神経目を外側に動かす上斜筋の動き。
5 三叉神経顔面の皮膚感覚、口の中の感覚など。
6 外転神経眼球を外側に向かって水平に動かす機能。
7 内耳神経聴覚と平衡の感覚など。
8 顔面神経顔の表情をつくる筋肉の動き、味覚の一部など。
延髄9 舌咽神経舌から耳にかけての感覚、味覚の一部
10 迷走神経のどの知覚・味覚の一部、呼吸、運動、体のバランス、頚胸腹部の臓器を支配。
脳神経の中で唯一腹部にまで到達する神経。
11 副神経肩や首の筋肉の運動(僧帽筋、胸鎖乳突筋)。
12 舌下神経舌の運動。

4.昧情報の複雑なネットワーク

孤束核から視床を経て、一次味覚野に送られ、ここで統合され味として認識される。
昧情報の複雑なネットワーク

しかし、「おいしさ」の要素は、味だけではない。味の情報は二次味覚野に送られ、匂いや歯ごたえ、見た目など、様々な感覚情報と統合される。
さらに扁桃体では、過去の食事の記憶や好き嫌いと結びつき、おいしさが実感される。すると脳内に神経伝達物質が放出され、幸福感や満足感が生じ、もっと食べたいという欲求が食事行動を促す。このように脳内の様々な領域が連携することで、私たちはおいしい料理を味わうことができる。

動物は、有害な食べ物とそうでないものを区別することは生存にとって重要だ。
ある食べ物で食中毒を起こすなどの悪い経験をすると、それがたった1回であっても、その学習効果は強く長く継続する。
これを味覚嫌悪学習といい、アルコールやたばこへの依存を断ち切るための治療に用いることがある。

5.味覚障害
出典:味覚障害の原因-亜鉛不足だけではなくさまざまな原因が考えられる(任 智美 メディカルノート)

味覚障害には、味覚そのものを感じる力が弱くなり、ひどくなるとまったく味を感じなくなる「量的障害」と、ある味覚だけ感じなくなり、何を食べてもいやな味がするといった「質的障害」の2つがある。
味覚障害はさまざまな原因によって生じる。
 味物質を味蕾で受け止めるまで
 味蕾で受け止めて神経に届くまで
 それが脳に伝わるまで
のそれぞれの段階で味覚を阻害する要因が働いて引き起こされる。主に以下の要因が考えられる。
  • 血液中の亜鉛不足
    亜鉛が不足すると味細胞の生まれ変わりが遅くなり、味細胞のはたらきに影響を与えることがわかってきている。
  • 薬の副作用
    薬の中に含まれる物質と亜鉛とが結びつき、亜鉛の吸収が妨げられたり、亜鉛が体の外に出されることがある。抗アレルギー薬・抗がん薬・解熱鎮痛薬・抗うつ薬など多くの薬が味覚障害の原因となる。
  • 心因性
    うつ病ストレスなどを感じたときに味覚障害が起こることがある。
  • 感冒(かぜ)
    熱を出した後に味が分からなくなってしまうことがある。嗅覚障害と同時に起こることがある。感冒中の味覚障害は自然に治ることが多いが、感冒後の味覚障害は治りにくいケースがある。
  • 舌の表面の異常
    舌の表面に白いものが見えることがあるが、これが舌苔ぜったい。細菌や食べかすなどが舌の表面に付着したもので、消化機能が衰えたり、喫煙や口内環境が清潔でないときに厚くなる。
    また、抗生剤の服用によって黒毛舌こくもうぜつになることもある。
    舌苔が厚くなると味細胞を受け取る味蕾の外側を覆ってしまうため味覚障害が起こる。
    疾患としては舌炎ドライマウス(口内乾燥症)などがある。
  • 味覚障害を招く全身性疾患
    亜鉛不足や亜鉛の機能が働かなくなる全身性疾患として、貧血消化器疾患甲状腺疾患腎疾患(特に透析)などがある。
    味覚を伝達する神経経路が異常をきたすことで味覚障害を起こす疾患としては、顔面神経麻痺脳梗塞脳出血などがある。 
    味覚障害の患者さんの年齢を見ると、高齢になってかかる全身性疾患や、疾患に伴う薬剤の使用になって味覚障害が引き起こされるため、年齢が高くなるほど増える傾向にある。

6.主な参考文献

個別に出典を記載した資料の他は以下の資料。
●図解でわかる 14歳から知る人類の脳科学、その現在と未来(インフォビジュアル研究所(著), 松元健二(監修))
●脳と心のしくみ(池谷裕二(監修))
[ 2020/05/11(月) ] カテゴリ: 脳の勉強ノート | CM(0)
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