ポストさんてん日記

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PCR検査とは、検査キット(診断キット)とは、抗原検査とは、抗体検査とは

[ 2020/05/17 (日) ]
追記。2020/5/17
(上記までの追記記録は割愛)
初回公開日: 2020/2/12



新型コロナウイルス感染症に関するお話の中に、その診断方法としてPCR検査、検査キット、抗体検査という言葉がよく出てきます。
今回はその勉強をしましたが、web上には専門的な説明が多かったです。素人のブログ主が理解できる範囲で、ごく簡単に入口部分的なところを纏めてみました。

目次

1.PCR:Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)とは
2.PCR法の全体イメージ
3.PCRの原理
 3つのステップを繰り返すことによりDNAを増幅
 リアルタイムPCRとは
4.(メモ)PCRによるCOVID検査の限界
5.実は「職人芸」が不可欠なPCR検査
6.さまざまな新検査方式が登場
7.検査キット(診断キット)はPCRと違うもの
 抗原検査とは
 抗体検査とは
8.抗体検査・抗原検査・PCR検査 どう使い分ける?【追記】
9.「ウイルスが検出されていても、実は感染力はない」という状況
10.実際のところ日本にどれぐらい感染者がいるの? 続々と出てくる抗体検査の結果の意味
11.個人でのPCR検査キットの使用は控えましょう
12.関連エントリー

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1.PCR:Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)とは

細菌やウイルスの遺伝子の一部に、「必ずこの遺伝子を持っている!」と分かっている部分がある。(例えば腸管出血性大腸菌は、必ずベロ毒素産生遺伝子を持っている。)
検出したい細菌やウイルスが特有に持っている遺伝子(DNAの特定の領域)を、数時間で10万~100万倍に増幅し、細菌やウイルスの検出を行う方法がPCR。
1983年に、米国の分子生物学者キャリー・バンクス・マリス(Kary Banks Mullis 1944 – 2019)によって開発され、その功績により1993年にノーベル化学賞を受賞。

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2.PCR法の全体イメージ

PCR法のイメージ
PCR法の反応1回で元の2倍の遺伝子ができるため、これを繰り返すことで10万~100万倍まで増やす。 増やしたDNAを検出装置(上図の場合は電気泳動)にかけることで、それが目的のDNAであるかどうかを確認することができる。
目的の病原体のDNAを確認することができれば「陽性」、確認することができなければ「陰性」と判定される(定性検査)。
また、2倍ずつ増えていくPCR法の原理を応用して、細胞中の目的の遺伝子量を数値で表わすことができる(定量検査)。

実際に運用されている方法は、色々とあるようです。例えば、食中毒菌検査では、PCR食中毒菌検査
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3.PCRの原理

3つのステップを繰り返すことによりDNAを増幅
  1. 熱変性(温度帯:94~96℃)
    検体の2本鎖DNAを熱によって1本鎖に分離。
  2. アニーリング(温度帯:55~60℃)
    DNAプライマー(増幅したい領域に相補的な配列をもつ1本鎖の短いDNA)を結合(アニーリング)。DNAプライマーは解析された病原体の遺伝子構成を基に合成して作る。(今や遺伝子構成がわかればプライマーを合成できる企業は多いらしい。)
  3. 伸長反応(温度帯:70~74℃)
    耐熱性のDNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)でDNAを伸長し、元と同じ遺伝子を成形。
以上の反応を自動で繰り返し行う装置がサーマルサイクラー。
この辺りの情報はweb上に豊富です。一例としてYouTubeの【高校生物】遺伝17 PCR法(20分)
なお、コロナウイルスの場合はRNAウイルスなので、上記の反応の前に、RNAを鋳型としてDNAを合成する。(逆転写反応)

リアルタイムPCRとは
PCR法で必須であった電気泳動が不要で、よりスピーディーで コンタミネーションによるリスクの低い遺伝子検出ができる。
その原理は、
反応液の中にあらかじめ蛍光プローブあるいは蛍光色素(ある特定の光を当てると蛍光を発生する化学物質)を添加し、特別な光を当てながら反応を進める。そのとき、発生する蛍光をリアルタイムで測定する。蛍光はPCR反応の進行とともに増加する。蛍光がある一定の強さに到達するまでのPCR反応の繰り返し回数を、比較することによりDNAの量を求めることができる。
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4.(メモ)PCRによるCOVID検査の限界

PDF新型コロナウイルス感染症(COVID-19)―水際対策から感染蔓延期に向けて―(日本環境感染学会 220/2/21)

5.現在、実施されているウイルス検出のための検査(PCR法)には限界があります。
新型コロナウイルスは、主に咽頭や肺で増殖しますが、インフルエンザに比べてウイルス量は少ないと考えられています。PCR法という核酸検査で増幅してウイルスを検出する方法が診断に応用されています。最初の検査で陰性で、2回目の検査で陽性となった症例も報じられました。インフルエンザに比べて1/100~1/1,000といわれるウイルスの少なさは、検査結果の判定を難しくしています。とくに早い段階でのPCR検査は「決して万能ではない」ことをご理解ください。


  • 感度:陽性の患者をきちんと陽性と診断する確率、
  • 特異度:陰性の患者をきちんと陰性と診断する確率

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5.実は「職人芸」が不可欠なPCR検査
日本がコロナで「PCR検査抑制」を決めたロジックを完全図解(鈴木洋子 ダイヤモンド・オンライン2020/4/13)

【ごく一部のみ引用】

その工程は大きく四つに分かれる。

  • 新型コロナの場合、ウイルスは肺に近い下気道の方にいるため、国立感染症研究所は気道からの吸引液か、鼻からスワブを突っ込み咽頭から液を拭い取る方法を推奨している。この作業自体も飛沫感染の危険を伴う。そのため個人防護具を着て1人終わるごとに毎回手順通りに着替えることが本来は必要になる。
  • 検体を他の検査機関に輸送するにも二次感染を防ぎ検体の品質を維持するため厳重な態勢が必要だ。
  • 検体前処理の図版中の写真のようにバイオハザード対応のキャビネットの中で、人手による前処理作業をすることが欠かせない。遺伝子検査業務は無資格者でもできるが、経験の浅い人がやると失敗や感染の危険がある。
機械だけじゃ無理すご腕技術者が支えるPCR検査01
機械だけじゃ無理すご腕技術者が支えるPCR検査02


【メモ】
コロナ、AI、放射線:「正解」のない臨床検査(上)(越智小枝 アゴラ2020/2/16)
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6.さまざまな新検査方式が登場

新型コロナウイルスの検査装置・技術の概要
出典:日本がコロナで「PCR検査抑制」を決めたロジックを完全図解(鈴木洋子 ダイヤモンド・オンライン2020/4/13)

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7.検査キット(診断キット)はPCRと違うもの

上表のイムノクロマト法(イムノクロマトグラフィー法:ICT法)が一般に検査キット(診断キット)と呼ばれており、高度な技術が要らず一般の診療機関で手軽に短時間で検査ができるもの。
その原理は抗原抗体反応(免疫反応)を利用した免疫法によるもの。

抗原検査とは
身近な例では、インフルエンザA型とB型の「迅速抗原検査キット」が普及しており、その原理は、以下のとおり。
判定部には、インフルエンザA型とB型それぞれのウイルス成分だけをとらえる抗体が使われている。検体に含まれるインフルエンザの抗原が、判定部の抗体と結合すると、試薬の発色成分によって、青色や赤紫色に見えるしくみ。(この抗体は、インフルエンザ以外の抗原とは反応しないことが確認されている。)
【参考】鼻の奥までぐりぐり、何の検査 ? (新山加菜美 科学コミュニケーターブログ2015/1/5)

PCR検査や抗原検査は、現在ウイルスが体内に存在しているのか(感染しているのか)を調べることができる。
抗原検査とPCR検査はどう違うの?
出典:国が承認した「抗原検査」ってどんなもの?(コロナ専門家有志の会 2020/5/14)

抗体検査とは
上記は抗原検査であるが、血液中の抗体を調べる抗体検査がある。
PCR法と抗体検査の違い
前述のように、PCR検査や抗原検査は、現在ウイルスが体内に存在しているのか(感染しているのか)を調べることができる。
これに対して抗体検査は、過去に感染したことがあるのかや、現在の感染の状態(感染初期なのか、感染してから時間が経過しているのか)、ウイルスに抵抗する能力(抗体)をすでに獲得しているのか(人にうつしにくいのか)を調べることができる。
出典:新型コロナウイルス検査 「PCR検査」と「抗体検査キット」の違いは?(柳田絵美衣 Yahoo個人 2020/4/3)

【メモ】
新型コロナウイルスの科学(3)(越智小枝 IEEI 2020/4/3)
新型コロナウイルス「抗体検査キット」の誤解は感染爆発を起こし得る(特別寄稿) (越智小枝 アゴラ 2020/3/29)

抗体検査の説明には、『IgMとIgGの出現の仕方』のお話が出てきます。その辺りの基礎については、別エントリー【基礎03】抗体とは~免疫の飛び道具にあります。
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8.抗体検査・抗原検査・PCR検査 どう使い分ける?
忽那賢志 Yahoo個人 2020/5/17
【ごく一部のみ引用】

  • 抗体とは?
    ウイルスのどの部分の抗体なのかによって微妙に異なりますが、新型コロナウイルスでは発症から概ね2週間くらいで8割の人が、概ね3週間くらいでほぼ全ての人がIgMまたはIgGが陽性になります。
    発症からの日数と抗体陽性率の推移
    しかし、この図を見てお分かりのとおり発症して間もなくは抗体を測定しても検出されない方が多いので、新型コロナの抗体検査が陰性であっても発症して2週未満であれば「新型コロナではないとは言えない」ということになります。
  • 抗原とは
  • PCR検査とは
    PCR検査はウイルスの遺伝子の一部分を測定しますので、発症してウイルスが増えている状態で検査を行えば陽性となります。だいたい鼻咽頭のPCR検査は3週間くらいまで陽性になり続けます。
    こちらが新型コロナの発症からの日数とそれぞれの検査の陽性率の推移を見た図になりますが、発症してからしばらくはPCR検査が陽性になりやすく、2週以降抗体検査(IgM/IgG)が陽性になりやすくなります。
    発症からの日数とPCR検査、抗体検査、ウイルス分離の陽性率
    この図の中に抗原検査はありませんが、ウイルスの一部を検出するという意味ではPCR検査と同じ推移をすることになります。
    今感染しているかどうかを知るためにはPCR検査抗原検査が向いており、過去に感染していたかどうかを知るためには抗体検査が適しているということになります。
    それぞれの意義・長所・短所をまとめると以下のようになります。
    PCR検査・抗原検査・抗体検査の意義・検体・長所・短所
  • 抗原検査とPCR検査はどう使い分けるのか
    さて、抗原検査とPCR検査はどちらも「今感染しているかどうか」を診断するためのものです。
    ではこの2つの検査はどう使い分ければよいのでしょうか。
    抗原検査キットの添付文書によれば、感度は低く、特異度は高い、つまり「本当の感染者を見逃してしまうことはあるが、陽性と出た場合の結果は信用できる」ということです。
    「抗原検査が陰性であっても新型コロナを否定はできない」「抗原検査が陽性であれば新型コロナと診断できる」と考えて良さそうです。
    想定される抗原検査とPCR検査のフロー
    現在想定されている使い方は、新型コロナが疑われた方に抗原検査を施行し、陽性であれば新型コロナと診断、陰性であっても確定例との接触歴や渡航歴、臨床症状などから新型コロナが否定できない場合にPCR検査を行うという流れです。
  • 抗体検査はどのように役立つのか
    診断されていない(主に無症状~軽症の)症例がどれくらいあるのかを把握する上では抗体検査が適しています。
    抗体検査は個人個人の診断というよりも、感染症の全体像を把握し、公衆衛生上の対策に役立てることができます。
  • 抗体検査の解釈の注意点
    抗体検査キットについては現時点ではどれくらい正確なのかに関する情報がまだ十分ではありません。
    コロナウイルスの中には風邪の原因となるヒトコロナウイルスも4種類ありますが、これらの風邪のウイルスと交差反応が起こり、風邪を引いた人でもこの新型コロナの抗体検査キットが陽性になってしまう可能性もあります。
  • いずれの検査も「正しいタイミングで使うこと」と「正しく結果を解釈できること」が大事

【関連情報】
唾液による抗原検査が保険適用に メリットとデメリット(忽那賢志 Yahoo個人 2020/6/30)
唾液がPCR検査の検体として使用可能に 利点と欠点(忽那賢志 Yahoo個人 2020/6/2)
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9.「ウイルスが検出されていても、実は感染力はない」という状況

【ごく一部のみ引用】

  • 「PCR検査が陽性=感染性あり」ではない
    PCR検査はウイルスの遺伝子の特定の領域を検出しているものです。
    ウイルスそのものではないため、死んだウイルスの断片を引っ掛けているだけのことがあります。
    ですのでときどき発症から30日以上経ってもPCR検査が陽性になり続ける患者さんがいらっしゃいますが、だからといってずっと感染性が続いているとは限りません。
    新型コロナウイルス感染症の感染性
  • いつまで感染性があるのか
    先ほど申し上げた通り「PCR検査で陽性=感染性」ではありません。
    ではどうやって感染性を推測するのかですが、一つは「ウイルス培養」を用いた方法があります。
    生きたウイルスが培養できるということは、感染性のあるウイルスが分離できたということになります。
    この培養できるウイルスが分離できるまでの期間が感染性が有ると外挿することができます。
    発症からの日数とウイルス培養陽性陰性の推移
    発症から8日目まではウイルス培養が陽性になる事例がありますが、9日目以降で陽性になった検体はありませんでした。
    つまり8日目までは感染性のあるウイルスが分離できたということになります。
    また、台湾から100例の確定患者とその濃厚接触者2761人(このうち22人が後に新型コロナウイルス感染症を発症)についての報告では、濃厚接触者のうち発症したのは、発症前または発症から5日以内の確定患者と接触した人だけであり、発症から6日以降に確定患者と接触した人のうち新型コロナに感染した人はいませんでした。
    これら2つの研究から、発症から1週間を超えればほとんど感染性はなくなることが示唆されます。
    というわけで、発症から14日以上経過していれば他の人にうつす可能性はかなり低いと言って良いでしょう。
    なお、稀な事例として退院後に再度新型コロナウイルス陽性となる方が確認されていることから、厚生労働省は退院(=隔離解除)から4週間は以下のことを徹底するよう通知が出ています。

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【ブログ主が理解したことと、ごくごく一部のみ引用】

  • ブログ主が理解したこと
    抗体検査は現状では、「あくまでも疫学調査と研究の段階」
    抗体検査そのものがまだ開発段階の時点で、集団感染率の発表に急ぐことには疑問があります。市民は気を緩めず感染防止につとめ、基礎研究の進行を見守ってほしい。研究者は、この問題が社会に大きな影響を与える点を肝に銘じ、厳密な性能評価を進めてほしいです。
    医師が個人の診断に用いるためには、PMDA(医薬品医療機器総合機構) から体外診断薬としての承認をとったキットであることが必要。
  • 様々な抗体検査の結果
    大阪市立大学大学院の医学研究科寄生虫学の城戸康年准教授
    神戸大学や神戸市立医療センター中央市民病院などの研究グループ
  • 医療者・研究者はどう評価するか?(ものすごい豪華な専門家8人のコメント)
    国立感染症研究所感染症疫学センターの鈴木基センター長
    感染症対策コンサルタントの堀成美
    大東文化大学のスポーツ・健康科学部教授、中島一敏
    インペリアル・カレッジ・ロンドン准教授の免疫学者、小野昌弘
    群星沖縄センター長の総合診療医、徳田安春
    名古屋市立大学公衆衛生学分野教授の鈴木貞夫
    米国国立研究機関博士研究員の峰宗太郎
    川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦
  • キーワード
    交差反応、代表性、集団免疫、研究倫理


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11.個人でのPCR検査キットの使用は控えましょう
忽那賢志 Yahoo個人 2020/4/22

【ごく一部のみ引用】

筆者は感染症専門医ですが、一般の方がこのPCR検査キットを使用することは推奨しません。

  • 楽天から販売されているPCR検査キットとは
  • 様々な制約がある検査キットであることに注意
  • 検体の採取は経験のある医療従事者が行うべき
  • 陽性であったとしても再検査となりかえって医療機関に負担が
    楽天が販売を開始したPCR検査キットは、
    • 陰性であっても新型コロナではないとは言えない
    • 陰性という結果に安心して外出した人が周囲に広げる可能性がある
    • 陽性であっても新型コロナとは言えない
    • 医療機関の負担を増やす可能性がある
    ということで、一般の方が個人で使用することは推奨されません。


【参考】
楽天のPCR検査キットは医療崩壊のトリガーを引くか?(桑満おさむ 論座 2020/4/27)「心配だから」「念の為に」で大量の偽陰性者・偽陽性者が生み出される
楽天の検査キット(COVID-19 PCR Testing Kit)は私たち国民の努力を無駄にする。 (五本木クリニック 2020/4/23) 
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[ 2020/05/17(日) ] カテゴリ: COVID-19関連 | CM(0)
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